サッカーとグローインペインシンドローム

リハビリ

サッカーに特有の痛み

サッカー選手に特有のスポーツ障害に、グローインペインシンドロームと呼ばれている鼠径部(脚の付け根)周辺の痛みを引き起こすものがあります。ロングキックやシュートなど力を入れるキックで症状を出すこともありますし、走ったり方向転換する際にステップを踏むことで痛みを出す場合もあります。今回はグローインペインシンドロームについてお話ししようと思います。

グローインペインとは 鼠径部痛?

「グローインペイン」という言葉自体は「鼠径部痛」を意味します。これは症状を示す言葉であり、器質的疾患(具体的にどこが悪いか)を示す言葉ではありません。スポーツとは関係ない疾患でも鼠径部が痛くなることはあるため、(感染症でリンパ節が腫れている、鼠径ヘルニア)その場合はまた鑑別と別の治療が必要になります。

運動器(骨や関節、筋肉、靭帯など)が原因で鼠径部が痛くなることもあります。代表例としては恥骨結合炎、恥骨下枝疲労骨折、恥骨浮腫、内転筋腱障害、スポーツヘルニア、FAI(Femoroacetabular impingement)、腸腰筋関連病態などが挙げられます。

グローインペインシンドロームとは

グローインペインシンドローム(鼠径部周辺痛症候群)は、股関節周辺の痛みの原因となる器質的疾患がなく、上半身~下肢の可動性・安定性・協調性に問題を生じた結果、骨盤周辺の機能不全に陥り、運動時に鼠径部周辺に痛みを起こす症候群であると仁賀が報告した概念です。

以前は不明であった器質的疾患も、医学の進歩や仁賀らの臨床努力により徐々に上記したような原因病態が明らかになりつつあり、真の意味で器質的疾患が不明であるグローインペインは減少傾向にあります。現在は何らかの理由で生じた全身的機能不全が鼠径周辺部の器質的疾患発生に関与し、運動時に鼠径周辺部に様々な痛みを起こす症候群であると考えられています。

原因は”協調性”の低下

グローインペインシンドロームの原因として、キックなどの全身運動の際に痛みが生じる選手が多いことから、腕や体幹などが脚とうまく連動しないために、鼠径部に負担がかかり、痛みの原因になっていると考えれらています。実際検査をしてみると、股関節や体幹などに機能低下が見つかることが多いです。関節可動域や筋力、バランスなどを検査します。

もちろん片足立ちもチェックします!!

治療法 手術?リハビリ?

以前は外科的に鼠径管の手術(鼠径部のヘルニアに対する手術)が行われていましたが、前述した通り以前は痛みの原因となる組織がわかっていませんでした。ですが何かしらの対処をしなければならない…。そのため原因ははっきりしないが、見込みでスポーツヘルニアが潜在的に潜んでいると考えられオペが行われていました。実際良くなる選手もいましたが、手術によるものであるのか、休養や拘縮(傷が硬くなるような感じ)の影響なのかわからなかったそうです。ですが今は医学が進み、原因となる病態が明らかになりつつあり手術の適応もあると言えます。

最初の介入として、一般的には保存療法が行われることがと思います。グローインペインに対するリハビリも進歩していて、スポーツ復帰をする選手も増えています。

今のところ絶対に手術がいい、リハビリがいい、と判断するよりは、痛みの原因をできる限り精査、診断してくれる医師や機能障害を専門的に評価する理学療法士がいる医療施設を受診することをお勧めいたします!!

まとめ

  1. グローインペインシンドロームは器質的原因がはっきりしない鼠径部痛である。
  2. 病態がはっきりできるグローインペインもあり、それに対しては患部への治療が必要である
  3. 全身を効率よく使うことができない場合、リハビリテーションで機能改善を図る。

怪我に対する知識は重要ですね。医師と理学療法士がしっかり評価してくれる医療機関への受診がベストです!!