肩関節脱臼を知ろう

リハビリ

大した怪我じゃないと思われがちだが…

肩関節脱臼は文字通り、肩関節を構成する骨が外れることで起こります。肩甲骨から上腕骨(二の腕の骨)の骨頭(先っぽ)がずれてしまう怪我のことです。

ラグビーやアメフトのようなコンタクトスポーツ、柔道などの格闘技のイメージが強いかもしれませんが、実はサッカーでもかなり多い怪我です。(僕もたくさんリハビリしています。)もちろんスポーツなんか関係なく、誰にでも起こる怪我でもあります。

「もうハマったから大丈夫でしょ?」

そんなイメージがついている方も非常に多いかと思います。脱臼は骨が外れただけではないんです。実は脱臼した時に、周りのスジや筋肉、軟骨様のものや骨を大きく損傷していることがあります。肩をはめ直してもらっても、周りの組織は治るわけではありませんし、さらに言えば組織が壊れたせいで脱臼する前より不安定になってしまっているのです。

 

どんなケガなの?

肩は上腕骨と肩甲骨が繋がっている関節です。骨と骨ですので、関節のようにくっついているにはスジや筋肉が必要です。その内、スジみたいなイメージのものが「関節包」と呼ばれるものです。まず骨と骨が引き剥がされるので、この関節包はすごく引っ張られることになります。大体脱臼する方向は前下方と決まっていて、図の赤い印の部分がよく伸びたり破れたりしてしまいます。まず関節包の損傷が病態の一つとして存在します。ですが実際はあまり関節包自体が真ん中でパーンと裂けたりすることは少ないです。実際は関節包が付いている根元、肩甲骨側の関節包がくっついている方が壊れてしまいます。↑図の赤い範囲内の部分、これは肩の前下方向ですが、この部分は軟骨が厚く盛り上がって土手のようになっていて、肩が脱臼するのを防いでいる部分です。ここを「関節唇」と言います。ここが壊れることが脱臼のメインの病態です!!

脱臼して自分で整復(戻せる)できたり、自然にはずみで戻ればいいですが、実際は身動きが取れなくて毎回救急車を呼んだり、その後も痛くてしばらくまともに生活が送れなくなるなど苦労が絶えないこともあります。
ハマったら終わりな怪我ではないのです。

どんな治療をするの?

治療方法は手術療法か保存療法(自然修復を待つ)の2パターンです。

保存療法は関節を固定して、関節唇や関節包が自然治癒で修復するのを待つ方法です。最低でも怪我をした時から2週間は固定をして、しっかり組織を修復させた後にリハビリをすることでスポーツ復帰や日常生活の復帰、再脱臼予防を目指します。

特徴は、手術に比べて復帰が早いですが、肩の安定性が必ず戻るとは言えないことです。大丈夫な人もいるけど、大丈夫じゃない人もいます。何年かしたら、突然脱臼することもあります。初めて脱臼した人はまずこっちで様子を見ることもありますが、ラグビーなどコンタクトスポーツをする場合は初めから手術を選ぶこともあります。

手術療法は関節鏡で壊れた部分を縫ったり、骨を移植して肩を安定させる手術をします。保存療法では自然に任せた部分を、実際にチェックして修復するので安定性では抜群です。特に何度も何度も脱臼している場合、もう放っておいて治る可能性はとても低くなります。こちらももちろん手術後はリハビリが必須です。

治るのにどれくらいかかるの?

保存療法は最低でも受傷してから2週間固定期間を設けます。亜脱臼程度(すこーし外れた程度)で自然整復がすぐ起きた場合、何の怪我だか判別がつかず固定をしないで過ごしてしまう方もいます。ですが、普段から脱臼に関わっている医師や理学療法士は少し話を聞けば大体脱臼かどうか判別できます。とにかく初期固定をしっかりすることが重要です。多少肩が動くようになったとしても、初期に三角巾を外すことは絶対にやめましょう。

その後受傷や固定による機能低下の程度を見ながら、2-3ヶ月かけてスポーツ復帰を目指すのが一般的です。スポーツ内容や本人の能力、スポーツレベル、怪我の重症度(造影剤を入れてMRIを撮ったりCTを撮らないとわかりません)に合わせます。

手術療法は一般的には3ヶ月でジョギング開始、その後段階的にスポーツ復帰させて6カ月で対人プレー許可と保存療法と比較しゆっくりになりますが、保存療法がうまくいかなかった場合や、確実な復帰を目指す場合にはこれ以外に選択肢はありません。こちらももちろんリハビリ必須です。手術内容などに合わせて復帰時期を選んでいきます。

まとめ

  1. 初回脱臼の場合は保存療法で一回復帰を試すのはあり。損傷程度やスポーツによってはいきなり手術も考慮。保存の場合はとにかく初期固定を!!
  2. 2-3回脱臼しているなら基本は手術療法。前回の脱臼からすごく期間が空いてたすれば、保存療法を選択しても良い。
  3. 5回以上脱臼している場合、手術療法推奨。
  4. もう何回脱臼したかわからない場合、手術しかない。理由があって出来ないのであればリハビリで注意点など確認すべき!!

 

サッカー選手も意外と脱臼が多い

長友選手も香川選手も脱臼したことがありますし、最近ではオーストラリア代表のナバウト選手も負傷しました。他にも脱臼って結構多いです。リハビリもたくさんしてます。とにかく脱臼はただ外れるだけの怪我だと思わないでください。サッカーパフォーマンスに大きく影響するからです。今後は腕の使い方などのサッカーパフォーマンスについてもまとめていきます。