フリーキックの教え方ってわかりますか?
フリーキックは究極の個人技術
得点に関わる重要度などを考えると、フリーキックの練習は大きな意味があると思います。問題は、フリーキックは基本的に「個人任せ」である点だと思います。キックが上手(飛ぶ、早い)な選手がキッカーとなり試合を行なっているものの、蹴り方自体は本人にお任せであるパターンは多いと思います。チーム練習としても行わないのではないでしょうか?
フリーキックの練習をやる意味
僕はフリーキックの練習は、誰でもやってみた方がいいと思います。身体を使う感覚の練習にもなりますし、キック自体を楽しいと蹴る楽しみを増やすことにもなるでしょう。ちゃんと曲がるとすごく楽しいですよ。そんなわけで今回はカーブについてまとめてみましたので、ぜひ実践してみてください。
今回のお話は、全くと言っていいほど曲がらない選手が少し曲げられるようになる、そんな感じの内容だと思ってください。そこから始まれば、後は練習とともに上達していきます。
フリーキックの基本
1.壁を超えるように蹴り上げて、ゴールに収まるように落とす

フリーキックの最大の難関は、壁を超える高さまでボールを上げなければいけないのにゴールに収まらなければいけないことです。プロ選手は当たり前のようにこれを成し遂げていますが、これを実際に僕らが行うのはとても難しいです。距離が近い場合は壁を超えるような高さの軌道でキックを行うと、そのまま枠の遥か上を飛んでいってしまうんです。かといってゴールに収まるような高さで蹴ると壁にぶつかります。プロ選手は一体どうやってこの問題を解決しているのでしょうか?
2.まずは壁を越える

壁を越えるには、最初に蹴り上げの角度を十分に保つ必要があります。上の図はインステップキックで蹴り上げの角度を作る場合のイメージです。足を縦にして差し込むと、壁を越えるのに十分な蹴り上げ角度を得るのは難しいです。この蹴り方だとどうしても低くて早い、弾丸系のシュートになってしまいます。ではどのように蹴り上げの角度を作るべきでしょうか?

こちらの図は足を横から差し込んでいる場合です。足が横向きになっている分、ボールを下から捉えることが容易になっているため蹴り上げ角度は得やすくなっています。まずは壁を越える蹴り上げ角度を作るのに、足を横から差し込む蹴り方の方が容易であると考えられます。
実際、9m離れた180cm相当の壁を越えるには15-20°程度の蹴り上げ角度が必要だそうです。
※今後書く予定ですが、「ブレ球」「無回転」などはインステップ系の蹴り方でも可能です。これはかなりの身体機能を必要としますが、今回「カーブ」に関しては横から足を差し込むことをイメージしてください。
蹴り上げの角度に関することは、ロングキックについてまとめた際にこちらに記載してありますので、ぜひご覧ください!!
3.ボールを落とす

壁を超えたままの蹴り上げ角度では、そのままゴールの遥か上を飛んで行ってしまいます。そのため、次はボールを落とすことを考えなければいけません。蹴り上げの角度は足の差し込み方で最初に作り出すことができますが、もう飛んで行ってしまったボールの軌道を、どのように変化させればいいのでしょうか?そもそもボールの軌道はどんなものに影響を受けて変化するのかを知っておく必要があります。
4.ボールを落とす物理的な力

ボールは「マグナス効果」、「ベラヌーイの定理」、「ドラッグクライシス」などいくつかの物理的な法則の影響を受けて軌道が変化するようになっています。これらの特徴をまとめると、フリーキックでボールの軌道が変化する原理がわかります。それは「ボールがある一定の速度に達すると、球体の空気抵抗が落ちて回転によるボールの変化が大きくなる」ということです。この中でも特に重要なのは、回転はボールの軌道を変化させるということです。
図はボールの軌道を動かす原理で、「マグナス力」と呼ばれるものです。上からボールを見ていると思って下さい。反時計回りにボールにスピンをかけると、ボールは回転する方向に向かう「マグナス力」という力に押されて曲がっていきます。実際のキッカー目線では右足で左回転をかけて、左へ曲げるような感じです。
フリーキックで「曲げよう」と思ったら、やはり横の回転をかけてみようと思いませんか?物理的な原理を考えたら、これは間違えではないようです。横の回転はボールを横に変化させます。ではやはり縦の回転が軌道の高さをコントロールすると考えられます。ボールの高さに関係する回転を考えてみましょう。
5.ストレートは実は変化球

サッカーではあまりストレートって言葉は使いませんね。ストレートは野球で「直球」を指す言葉です。「変化をしない球」みたいなイメージがあるかもしれませんが、厳密にいうとストレートも「落ちない変化球」であると言えます。
野球のストレートにかかっている回転は、バックスピンです。このバックスピンは、「ボールの軌道を上方向に変化させる力」を生み出しています。つまり、ボールは実は上方向に変化しています。ですが、それと打ち消しあう力が働いています。「重力」ってやつです。ボールは重力によって下に引っ張られますが、このバックスピンにより上にも引っ張られ、結果的には「真っ直ぐ」進む軌道になります。これがストレートが「落ちない変化球」と言われる所以です。
サッカーではどうでしょうか?サッカーは基本的にはボールを下から上に蹴り上げます。なので上がっていく軌道のボールになります。これにさらにバックスピンが加わると、ボールはさらに上に上がっていきます。そして足部が地面(一番下)にある構造上、ボールの下を叩くことが多くなるため、キックは基本的にはバックスピンがかかりやすいと言えます。速度を重視した、直線的なシュートも全てバックスピンです。いわゆる弾丸シュートみたいなやつですね。僕らの普段使うロビング系のキックは、ほとんどバックスピンだと思っていただいても結構です。
ほとんどのキックはバックスピンがかかっていますので、バックスピンが減るだけでもボールは落ちます。(上に上がらなくなります)つまり、曲げたい方向へのスピンをかけたぶんだけ、バックスピンの程度が弱まれば自然とボールは落下していくということになります。もっと落とすにはトップスピンが必要になりますが、まず曲げる変化を出すためにはサイドスピンをかけることを大切にしましょう!!
ではどうやってスピンをかけるのでしょうか?少しボールのことも考えてみましょう。
「こする」より「ずらして当てる」
スピンをかけようと思うと、ついボールを強くこする感じで蹴りたくなるのではないかなと思います。でもこするのは微妙です。あまりこするのがよくない理由を説明します。
1.サッカーボールを変化させるのにあまり回転が必要ない

野球ボールを変化させるには、1秒につき30回程度の回転数が必要だそうです。野球ボールの直径はおよそ7cm、サッカーボールは30cmです。マグナス力はボールの半径の影響を受けるため、ボールが大きい分回転数は少なくても大丈夫です。
2.回転を追求すると速度が落ちる

ボールの中心から離れれば離れるほど、回転はかかりやすくなります。ボールをこする感覚を強めると、回転は強くなりますがボールのスピードは落ちます。ボールスピードを早くするには、ボールの中心から2-3㎝の範囲内にインパクトしないと、最大速度の80%以下の速度に落ちてしまいます。カーブの変化量は、ある一定のスピードを超えないと大きく変化しません。ボールスピードを殺してまで回転数を上げるよりは、しっかり芯を捉えた上で、スイングする角度を微妙にずらすことで回転数を上げる方がカーブの変化量を増やすことができます。
3.ボールはシームレスになった
2006年のドイツW杯から、熱圧着方式のシームレスタイプの公式球になりました。つまり、縫い目がないため引っ掛ける部分がないのです。そのため、縫い目に引っ掛けて回転させるようなキックより、中心からずらして「押し出す」ような変化のかけ方が主流となりました。野球ボールは縫い目があるので、そこに引っ掛けて回転をかけていますね。
練習方法を考えよう!!
蹴り上げの角度を上げる
まずはそこそこ蹴り上げの角度を作ることが重要です。このためには軸足を斜めに差し込むことが重要になります。
軸足を斜めに差し込むためには股関節や骨盤の側方移動を助けるトレーニングが必要になります。骨盤の側方移動が乏しいと、斜めに差し込むことが難しく、蹴り上げの角度を作りにくくなります。そもそもボールが高く上がらない場合は、少し軸足側への体重移動などをアドバイスして上げることも大切です。
スピンとスピードを両立するインパクトを探す

まず、インパクトする部位についてです。足側のインパクトする部位は足の足根骨ですが、イメージとしては親指をボールと地面の間に差し込むような感じになると思います。ですが、決してその親指でこすって蹴り上げる感じではありません。そこに足を差し込めば、自然と足根骨にあたり、インパクトとスイングの方向がずれてちょうど良いスピンがかかります。まずはその部分に足を差し込む感じでキックをさせて、インパクトして飛んでいく方向とスピンのかかり具合を確認して下さい。筋力や身体の使い方が上手でも、当てた感じとスピンの感じを調整することは必須です。
キックの身体の使い方を考える

実際のフリーキック動画をたくさん分析しますと、プロ選手はわざと骨盤を前に回さず、残すことで、スイングの方向をずらす技術を使っています。この方向にスイングして、かつ自分の体幹や股関節で作り出したエネルギーをボールに乗せることが大切です。このように腰を使うために、まずコツとしてここから入ると良いよというアドバイスがあります。

軸足のつま先を、少し内側に入れます。これだけでもかなりカーブっぽい腰を残したキックができるようになります。これは結構オススメです!
まとめ
- 壁を越えるために、ある程度蹴り上げの角度をつける必要がある
- 壁を超えた後は、ゴールに収まるようにボールを落とさなければいけない
- バックスピンを減らすだけでも、ボールは落ちる
- 足はボールと地面の間に差し込むようなイメージを持つ
- 少し腰を残す感じにする。軸足のつま先を少し内側にしましょう
いかがだったでしょうか?当ブログではできるだけご本人に役立つものを提供できるよう、わずかながら実践できる運動まで合わせて紹介できる、実践型のブログを目指していきます。ぜひご興味のある方へのご紹介などよろしくお願いいたします。