目次
はじめに
トップページにも記載していますが、私は医療従事者で「理学療法士」として病院で働いています。理学療法は応用科学です。僕の基礎となる学問は解剖学や生理学、運動学です。そこに整形外科や病理学などの知識やトレーニング、バイオメカニクス(主に歩行)などが加わり、それらからなるべく矛盾しないように実学しています。私のインサイドキック に関する考察は、特にこの辺りに影響されています。
そしてもう一つ重要な点は、かなりの量の動画を見て、実際の動きを撮影して分析し、実際に自分でトレーニングやプレーをして確認してきた結果をお伝えしているということです!!
インサイドキックの考察のパイオニアは蹴球計画さん(リスペクトしております)です。デシは大いにインスパイアされています。ぜひそちらもご覧になっていただきたいです。では、インサイドキックについてです。どうぞ。
理論編
インサイドキックの基礎
インパクトの部位とキックの役割

インパクトの部位は舟状骨という名前の骨です。内果(内くるぶし)の前下方あたりにあります。手のひらで足の内側を手の平で包むように押して見てください。その時に出っ張っている突起が舟状骨です。
正確性がインサイドキックの売りですが、それはインステップに比べてグラウンダーのパスを蹴るにあたりインパクトしやすいことが理由だと思われます。
データから考えるパス

こちらのデータをご覧ください。まずパスの本数ですが、パスの多い選手は平均1分に1本パスをすることになります。そう思うとパスって重要ですね。
ではポジションに目を向けてみましょう。SBやボランチポジションが圧倒的なパス本数であることがわかります。これはビルドアップの役割があることやアタッキングサード関連のポジションの選手に比べプレッシャーが少ないことが理由として挙げられます。
ですが、もう少しシンプルな理由があります。このポジションは、物理的に距離が近いということです。

Jリーグでもほぼ同様のことが言えます。このように、近い距離のポジションはパス交換が成功しやすいと考えられます。ですが逆サイドへの展開や楔に出すような、距離の長いパスはどうでしょうか?
これはビルドアップする側から考えれば狙っていきたいプレーですが、逆に言えばインターセプトを誰もが狙っているとも言えます。つまり、長いパスは成功しにくいのです。

長い距離のパスは重要なプレーが多く、パスの質が求められます。つまり、パスのスピードが十分であること、モーションが読まれないことです。この2点を求めるには、インサイドキックの蹴り方と、その特徴を理解する必要があります。
インサイドキックの蹴り方と特徴
パター型と膝下型
インサイドキック は「パター型」と「膝下型」と分類されていることが多いです。「パター型」はよく聞きますが、「膝下型」は統一された呼び名はありません。キックスピードの高さや、膝下を振るモーションの小ささから「正しいインサイドキック」として紹介されていることが多いです。パター型はモーションの大きさや身体の向きと蹴る方向が一緒であること、実際パススピードで劣る点から「悪いインサイドキック」扱いされていることが多いです。
パター型の特徴

いわゆる「踵から押し出すように」蹴るインサイドキックです。軸足は蹴る方向を向いていて、強く蹴るためにはかなり大きなモーションになってしまいます。他に強く蹴るための方法として助走を強くする方法がありますが、蹴る方向に向かって助走する必要があるので結果的にモーションはかなり大きくなります。
パター型のインサイドキックのモーションが大きくなる理由は、股関節をガニ股にする動きでパスを蹴っているからです。
これが「股関節外旋」です。動画は右股関節の外旋筋力のテストをしている所です。右脚がガニ股のになっていますよね?パター型は蹴り脚を振り抜く時に、こんな感じにガニ股に見える場合を言います。みんなが小さい頃から練習してきた「まっすぐ足の内側に押しあてる」「軸脚の爪先を蹴る相手に向ける」いわゆるインサイドキック です。
これは自分でやってみてもわかると思いますが、すごく力が入りにくいです。この動きでパスのスピードを上げることは非常に大変であることがわかります。
膝下型の特徴

「膝下型」のインサイドキックは、動きだけをみるとインステップキックのように見えます。太ももの後にスネが加速して、文字通り「膝下」を振っているように見えるのが特徴です。キックのために股関節を無理な方向へ動かす必要が少なく、素早い小さな動きでもかなりのパススピードを生み出すことができるのが特徴です。
膝下を振る動きを、「膝の伸展」といいます。膝関節はこの屈曲と伸展の動きだけに特化した関節で、とても強い力を持っています。筋力だけではなく、大腿骨と脛骨(太ももとスネの骨)という長い骨の中間点の関節である構造上の利点もあります。長い骨を動かす方が、先端の動きはとても早くなるからです。キックのスピードを上げる基本に、「中枢(体幹や股関節)で作ったエネルギーを末端(足やボール)へ伝える」という、運動連鎖(kinetic chain) というバイオメカニクスの概念があります。膝下を振る動きの方が、このような理論上もキックスピードに優れた蹴り方であると言えます。
バイオメカニクス

日本人トップ選手 vs 海外トップ選手
日本人は股関節外旋トルクが強いですが、海外選手は膝伸展トルクが強いという結果が出ました。パター型と膝下型の特徴を捉えていると考えられますが、蹴る方向や助走の方向、身体の向きなどは検討されていません。一概に海外選手が優れているとは言えませんが、日本人選手は強く蹴ろうとするとまっすぐ助走して、大きいモーションで、蹴る方向へ身体を向けているパター型になってしまっているのかもしれません。
大学生選手と日本人プロ選手
股関節や体幹で大きなエネルギーを作れているようですが、どちらも膝の伸展の貢献度(スピードに膝の伸展が関わっている割合)は少なく、力源は股関節の外旋がメインであるといった結果でした。おそらく蹴り方はどちらも同じパター型で、膝下を振れていないのでしょう。ただパター型でも押し出す力そのものはプロ選手の方が強かったようです。
サッカー経験者と未経験者
サッカー未経験者は、経験者と比較すると体幹や股関節で産み出されたエネルギーを足部へ伝えることができないようです。
インサイドキックを蹴る方向
蹴る方向による見た目の変化
インサイドキックは「パター型」と「膝下型」があって、運動学的、解剖学的、バイオメカニクス的に違いがあります。ですが試合では実際どちらのパターンの蹴り方も使われていて、身体の向きに対するボールを蹴る方向によってどうなるか変化します。
コロコロPKから考えるインサイドキック

遠藤選手のコロコロPKを見ると、キックする方向によって身体の使い方が変化しているのがわかります。蹴る方向を「軸脚側」と「蹴り脚側」とします。

上は軸脚側に蹴った時、下は蹴り脚側に蹴った時になります。下の蹴り脚側に蹴った場合、インパクトする瞬間に膝が曲がっていて少し腰が後ろに引けているように見えます。上の軸脚側に蹴っている時はどうでしょうか。蹴り脚の膝が伸びて、股関節が内転していくような感じに見えます。これがいわゆる「パター型」と「膝下型」の違いになります。実は見た目の違いは身体の向きと蹴る方向の違いで説明がつきます。
これはPK以外でも当てはまります。実際のプレーでもこの蹴る方向に合わせて蹴り方は変化します。
問題にしなければいけないのは、本来の用途と身体の使い方が一致しない場合です。例えば軸脚側へ蹴るのにパター型の蹴り方をする場合です。この場合は、身体の向きや助走の方向が蹴る方向と一致するため、「テレフォンパス」をしやすい選手になります。逆に腰が引けているにも関わらず、蹴り足方向へ強いキックを使用としていると「グローインペイン」の原因にもなります。
局面に合わせた蹴りわけ方
いわゆるステレオタイプ的なパター型のインサイドキックは「悪いキック」もしくは「よくない技術」のような印象があります。これは経験的にも昨今のサッカー談義でも共通の認識が得られると思います。
「インサイドキック はパスのような正確性を重視したキックに使われる」というのがサッカーの常識であると思います。

インサイドキックの練習といえば、基礎練習と名のついたこんな練習を思い出します。

向かい合ってパスの練習ってこんな感じですよね。ウォームアップとして身体を温めるためなら何でもいいと思いますが技術の練習として捉えるとどう思いますか?
これはいわゆる「パター型」のインサイドキックで、「股関節の外旋」をメインにしてそうなキックです。
インサイドキックに必要な技術
パター型にせよ膝下型にせよ、インサイドキックをする上で必要な技術があります。サッカーにおける技術の説明と、インサイドキックに必要な技術を説明します。
”技術”(テクニック)
これは主にボールを扱うテクニックのことで、身体要素をは切り離して考えます。脚が早かったり、高く飛べるっていうのは身体能力です。ただ走るだけでも、走り方だってスポーツによってぜんぜん違います。サッカーの技術とは、「サッカーをする上でだけ有用な能力」のことです。サッカーはサッカーボールを使いますので、サッカーボールを使っている時に関係する能力であればそれは技術です。ボールを持っていなくても、サッカーコート上で22人いる状況であれば空間把握能力や視力が必要です。これもサッカー特有であると言えます。ディフェンスも然りです。サッカーに関わるものが、サッカーにおける技術です。では、インサイドキック が上手くなるために必要な技術である「軸脚とボールの位置関係を保つ技術」を考えます。
ボールコントロールエリアとは

たくさんの選手を動画で分析すると、ボールコントロールエリアは骨盤の真下であると言えます。(厳密にいうともう少しパターンがあります)↑図の赤い範囲です。ここからボールが出てしまうと、ボールをコントロールするために身体を傾けたり軸脚の膝を曲げたりしなければならなくなります。「球離れがいい」「懐が深い」と評される選手はこのコントロールエリアにボールを収めておくのがうまい選手ということです。インサイドキック でモーションが大きい選手はここにボールが収まっていない状態でパスを出そうとしています。毎回バランスを崩しながら蹴る訳です。
インサイドパスがうまい選手

コントロールエリアにボールを収めてパスをしている選手はどうなっているでしょうか?まずエリア外にあるボールに無理矢理蹴り足を合わせることをしなくて済むので、インパクトさせるために膝を曲げたり身体を傾ける必要がなくなります。すると背中は真っ直ぐ伸びて膝もまっすぐ伸びます。パスのフォームは小さくなり、走る動作の延長でスムーズなパス動作が可能になります。
インサイドキックに必要な身体能力(身体機能)
インサイドキックが悪いフォームになってしまう。その原因はなんなのでしょうか?例えば先に挙げたボールコントロールという”技術”の問題かもしれません。ですが身体能力の問題かもしれません。実はここは鶏と卵の問題みたいに、どっちが先かみたいな簡単な問題ではないと考えています。

個人を取り巻く環境因子や身体要素、認知能力が関わってきますので、インサイドキックがうまく蹴れない原因はこれだと言い切れないと思います。特に身体機能は他のなんだか分からない環境因子の影響を受けますので、サッカーとは切り離して考えないといけないこともあります。サッカーの技術はサッカーに関する環境の影響を直接受けるでしょう。
歯切れが悪いですが、因果関係をはっきりさせるのであれば、個別にトレーニングなり技術指導を受けて、その前後でパスに関わるパフォーマンスが変わったかを確かめることで推察するしかないかもしれません。
ですが身体機能についてアプローチを行うこと自体は間違いではないと思います。上手くなるためなら身体機能に対しても取り組んで、技術的なトレーニングも行い、パフォーマンスアップを目指したいですよね。現実的に考えれば、出来ることはなるべくやることが重要です。
はっきりとした断言はできませんが、どちらもアプローチするのが定石です!!
軸脚?蹴り脚?腕や体幹?
そもそもどの部位がインサイドキックに重要な部位なのでしょうか?
軸脚?蹴り足?体幹?
例えば単独で蹴り脚(キックする脚)の内転筋(脚を内側へ動かす筋肉)を鍛えてもキックスピードが早くなる選手もいます。他にもスクールやレッスンでは蹴り方を指導する(軸脚を強く踏み込ませるとか腕を振らせるとか上半身を使わせるとか)ことでキックが変わることもあります。
結果的にそのトレーニングをやったからパフォーマンスが良くなったことには変わりませんが、だからその部位が一番大事!!みたいに考えるのは良くありません。
股関節の構造をみてみましょう。
股関節はユニット

股関節は、左右の関節が骨盤という大きな物体(分節とか言います)を間に挟んでつながっています。膝や足首は関節同士の左右のつながりは薄いですが、股関節はかなり左右揃って使うことが多い関節です。
軸脚、蹴り脚、体幹のどこが重要かと言うのは中々難しいお話だと思います。僕も指導現場やトレーニングを通じて、指導者の方がどう指導すればいいか悩んでらっしゃるのをみてきました。
実際は重要なところだけを考える必要はありません。股関節が左右協調して働くのですから、実はキックの練習をするだけで軸脚も蹴り脚も体幹もトレーニングされるはずなのです。
上の動画も、動かしている左脚だけではなく、踏ん張っている右脚もトレーニングになっていますし、体幹を傾かないようにすることで体幹のトレーニングにもなっています。
軸脚も蹴り脚も体幹も大切です。(解剖学的に隣接した関節なので)
それぞれの部位の役割を考えることが重要
蹴り脚の役割はわかりやすいと思います。足部のスピードをできるだけ早くすることと、インパクトする脚と足をしっかり固定しておくことです。これが結果的にキック、ボールスピードを上げることへと繋がります。では軸脚の役割は何なのでしょうか?
軸脚は回転の固定点
キックは回転運動です。膝から下だけを早く振るだけの動きのような気がするかもしれませんが、バッティングやゴルフのスイングと同じで、「軸」を作って回転しています。

軸脚の足首が捻挫するみたいにひっくり返ってるのを見かけることありませんか?これは軸脚を中心に生じている回転が伝わっている証拠です。フリーキックではかなり軸脚を斜めにしますが、普通のパスでも同じように軸脚を中心に蹴り脚を回転させているわけです。回転の軸がぶれていたらエネルギーがしっかりボールに伝わりませんよね?つまり軸脚は回転の軸として安定する力が必要なわけです。
股関節を安定させるには?
股関節を安定させる筋肉を鍛えることは重要ですよね。色々あるのですが、まずは大臀筋を鍛えることは重要だと思います。

理由としては、サッカーをしている選手は太ももが大きく股関節を後ろにそれない(伸展制限)があることを挙げます。この股関節伸展制限があると、股関節の捻れが出にくくなってしまうためです。この大臀筋は股関節を安定させたり、後ろに反らしたりと重要な筋肉です。大臀筋を活性化することが大切です。
軸脚の役割は、回転の中心として安定すること
軸足の悪い使い方

結論を言いますと、ボールが軸足のすぐ横になくて、軸足の前にある選手はインサイドに限らず全てのキックが悪くなります。ボールが軸脚より前にあると、スイングした脚をうまくインパクトさせる為にどこかで帳尻を合わせなければいけません。つまり、インパクトの際に軸脚の膝がカクッと曲がってしまったり上半身が後ろにのけぞったりします。骨盤や上半身が軸脚の後方に残るキックは、ボールへ十分に力を伝えません。力の伝達が悪いキックは大げさでバレやすい、「モーションの大きいキック」になります。「バランスが悪い」「フォームが悪い」など言われたことのある選手は、このように軸脚とボールの位置関係が悪いため、図のようなキックになっていることがあります。そしてこのキックで無理して早いパスを出そうとして、助走で不足を補おうとなおモーションを盗まれます。このような場合も、グローインペインシンドロームというサッカーなどスポーツによって引き起こされる鼠蹊部の痛みを訴える怪我を生み出す要因となります。一般的には体幹や股関節などの協調性を改善するための運動療法などが行われますが、こういったスポーツの技術の観点から見た問題もあるわけです。このようなパスをする選手は、パスのためにわざわざステップを踏みなおしたりして動きを止めたりします。動きながらパスが出せないのです。なぜかと言いますと、ボールを自分のコントロールエリアに収めておけないためです。だいたいボールが前にあるところでプレーに慣れてしまった選手は、ドリブル・トラップ・キック、全てのボールコントロールエリアが軸脚より前にあります。そしてみんなこんな姿勢になってきます。

ボールを目で見てコントロールすると、どうしてもこんな姿勢になりやすいのかもしれません。こんな姿勢だからボールを前でしかコントロール出来ないのかもしれません。パスのクオリティを上げるのは、間違いなく腰椎、骨盤の身体機能のチェックが必要になってきます。
軸脚についてどう教えるか
子供達へキックを教える時や自分で少し強いキックを意識しようと思った時に、軸脚について考えることも必要です。少しサッカーに詳しい方であれば、軸脚が大切な要素であることを経験上感じていると思います。ですが軸脚を具体的に指導する方法はわかりにくいかと思います。軸脚の何を指導すればいいのでしょうか?「強く踏み込ませる」「バランス良く」「力ませない」色々な言葉でのアドバイスがあると思いますが、難しいですよね?
足、膝、股関節などの部位を意識させて使わせるのも同じでしょう。「股関節使って!!」って言われても、困ります。
軸脚への指導はできる限り練習内容の工夫やエクササイズなどの身体トレーニングで、あまり意識せずに養われていくものです。選手には頭を使わせない方がいいと思います。それよりも、具体的なイメージを持って軸脚の使い方を理解できるようになる方がいいです。軸脚の正しい使い方を図で説明します。
軸脚は「膝折れ」してはいけない
悪いインサイドキックは軸脚の膝が曲がっています。キック全般において、軸脚が安定しているか安定していないかの基準に「膝が曲がってしまう」という点があります。この膝が曲がってしまうことがなぜ悪いか、そして軸脚の膝が曲がるってことがどんなことかを説明します。

膝自体全く曲がらないのかと言われるとそうではありません、みんな軸脚を着いた瞬間はクッションして膝が曲がります。
問題はその後、インパクトへ向かうまでの間に軸脚がそれ以上曲がらないことが重要です。↑図の右端、膝折れタイプがそれに該当します。動きながら蹴るインサイドキックの場合は膝屈曲タイプ(膝が曲がっているという意味)、止まった状態で少し強めのキックを蹴らなければいけない場合や、ストレートでシュート性のあるキックを蹴る場合は膝伸展タイプ(膝が伸びている)であることをよく見かけます。軸脚が膝折れタイプになっている場合、キックはいわゆる「ふかした」キックになります。なお、膝折れタイプは横から見たときにつま先より膝が前に出てしまうような状態です。
キックは回転運動である
キックはバッティングやピッチングと同じ、軸脚を中心にした回転運動です。身近なところで言えば歩行とも似ています。中心にある軸脚が安定しないということは、回転運動そのものの効率が悪いと言えます。膝折れタイプは、軸脚が安定していないということを意味しています。

これはキックする選手を上から見ているイメージだと思ってください。
膝伸展タイプや屈曲タイプは、こんな風にうまく自分の股関節がぶれないように安定させて、回転(専門的には回旋と言います)運動をうまく引き出しているのです(。図の①)「軸脚の股関節を安定させる」ことが大切です。
ところが膝折れタイプはと言いますと、膝が曲がりすぎて股関節が前方(実は下方にも、また別の機会に)に動いてしまっているのです。(図の③)股関節を中心に回転運動を十分に行えている選手は、全身をうまく使えて力まずに効率の良いキックが蹴れます(図の②)逆に膝折れタイプはかなり蹴り脚の労力を使わないといけません。軸脚が不安定なので、全身が使えず動きの効率も悪く、蹴り脚ですごく力まなければいけないからです。(図の④)
実践編
インサイドキックのトレーニング方法
インサイドキックの質を上げる(キックスピードの改善、素早く読まれにくいモーション、2種類のキックを蹴り分けれる)ことがパフォーマンスとしては大切です。
では理論はともかくどんなトレーニングをしていけばいいでしょうか?チェックの方法から、どんなエクササイズをすればいいかを説明いたします。
股関節の安定性を調べる
軸脚の股関節が安定しているかをチェックする方法として片足立ち(片脚立位)があります。片足立ちは医療の現場でも伝統的に使われているバランスのチェック方法で、股関節の能力や体幹の能力を測定することができます。ではどんな方法でチェックするかをお伝え致します。色々と細かい部分もありますが、まずは大まかなポイントからチェックしていきましょう。キック動作はまずそこからで十分です。
片足立ちの手順
- 両手を自由にした状態で、片方の足を上げます。(挙げる脚を利き足にした方が、キックと比較しやすいです。)
- 大体腰の高さくらいまでもも上げをする感じです。軸脚も持ち上げる脚もあまり力まないでリラックスしてください。
- その状態で骨盤の高さをチェックします。自分でベルトラインの少し上を触ってみてください。一番出ている部分を「腸骨稜」と言い、そこが骨盤のラインの目安になります。
片足立ちをどうやって評価するか?

↑図は片足立ちを後ろから見ていて、右脚を持ち上げている状態だと思ってください。この足を持ち上げた時に、腰のラインがどのように傾くかをチェックします。もも上げした足の方に骨盤のラインが下がったら「骨盤下制」逆にラインが上がってきたら「骨盤挙上」と判定します。理想の状態は、この骨盤のラインが地面と水平、傾かずにまっすぐになることです。
これはリハビリでもよく使われる検査方法です。色々と複雑な解釈はありますが、まずは自分や選手たちにこの片足立ちのテストをしてみて、骨盤を水平に保てることがいいバランスなのだと教えてあげることから始めましょう!!
これは医学的にはトレンデレンベルグサイン、デュシェンヌサインと呼ばれています。興味のある方はまたまとめますのでそちらをご覧ください。
股関節をトレーニングする
大臀筋を鍛えて股関節伸展位で安定させるトレーニングです。(膝関節は90以上曲げましょう)
骨盤を水平に保って回旋させるトレーニングです。骨盤を水平に保ちながら回旋運動することで股関節周囲の筋肉に刺激を与えることができます。軸脚で自分の身体をコントロールする感覚がない場合、こんな感じのエクササイズから入って動いていくのもありです。
こんなのでセラバンドを使って抵抗をかけるのもありですね。どちらも骨盤を水平に保って行うことが重要です!!
2種類の蹴り方で蹴れるようになる
骨盤を水平に保てると、回旋のコントロールが格段によくなります。股関節の回旋のコントロールがうまくなると、蹴りわけが上手になります。
この蹴り分けを可能にしているのが、骨盤を水平に保つ能力や股関節を回旋させる能力なんです。股関節周りのトレーニングや体幹のトレーニングが重要なことを、このように理論でわかって実践できるといいです。
おわりに
インサイドキックの理論と実際のエクササイズについてまとめてみました。もっと戦術要素と絡んだ身体能力の説明も今後実際にまとめていきますが、ぜひこれらのまとめからもパフォーマンスアップを目指してみてください。
いかがだったでしょうか?当ブログではできるだけご本人に役立つものを提供できるよう、わずかながら実践できる運動まで合わせて紹介できる、実践型のブログを目指していきます。ぜひご興味のある方へのご紹介などよろしくお願いいたします。