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ボールを優しく包み込む技術
ドリブル、キック、ステップワーク、ほとんどのサッカーの技術に必須の能力が「軸足を斜めに差し込むこと」です。ちなみに斜めとは「クロスステップ」のような見た目の動きのことです。つまり身体の使い方はクロスステップ と似てきますが、実際にはボールのスピードや軌道に合わせる技術が必要になります。(コーディネーションとかいうのかもしれませんが、サッカーに関係した調整能力なので、サッカーの技術でしょう。)サッカー未経験者の方の動きが硬く見える理由の一つだと思います。「サッカーらしく見える」動きはサッカーの技術であることが多いのが頷けます。そして、パフォーマンスレベルの違いによっても、動きの質が変化します。この動きができると、とても優しいボールコントロールができるようになります。では、具体的にどんな動きなのかを説明します。
様々なプレーの中の「斜め」
キック

インステップキックに顕著ですが、キックの軸足は基本的には軸足が斜めになります。むしろ実際はボールが動いているため、ボールを追い越すくらいの気持ちで足を前に出さなければいけません。ただ斜めに足を出せればいいわけではなく、ボールに合わせてできないと意味がない点はサッカーという競技の面白さだと思います。
以前インステップキック についてまとめた時の内容があります。ぜひご覧になってみてください。この軸足が斜めである点がかなりキックに関係してきます。
ドリブル

右足でアウトサイドで切り返しをしているシーンです。このようにアウトサイドでボールを扱うシーンではよく脚を斜めに差し込む動きがみられます。このように足を斜めに差し込んでも、上半身はまっすぐ立っておりバランスを崩していないため敵DFは急激な方向転換をされたような錯覚が生じます。もちろん細かいステップワークがあっての動きですが、分析していくとトップ選手はかなり脚の傾き自体が大きい傾向にあります。
ステップワーク

ボールがないところでも同じようなことが言えます。ボールのない「素走り」でもまるでボールがあるかのようなフットワークをみせる選手は非常に貴重です。サッカーと同じように方向転換をたくさん行うスポーツである、アメフトやラグビーのカッティング動作と比較を行うと、かなり身体の使い方に違いがあります。アメフトとラグビーは手でボールを持って進むスポーツですが、サッカーは必ず足でボールを運ばなければいけません。足は方向転換と同時にボールコントロールを要求されるため、ステップワークを大きく変化させます。ボールがない状況とボールがある状況で走り方が変わることは個人的にはおかしいと考えています。
斜めに差し込めるとなぜ有利か

足を斜めに差し込めると、横に押すベクトルが大きくなります。スタンディングよりクラウチングスタートの方が早い原理と同じようなものだと思いますが、単純に筋力的な要素ではないと考えられます。

股関節の一般的な内転可動域は20度くらいです。内転とはクロスステップの方向に脚を動かすことです。股関節は球関節と呼ばれる安定した関節で、実はあまり内転方向には脚を動かすことができません。つまりそこまでたくさん傾けたとしても、そこからより挟んでいく力は入りません。イメージとしては、自分の重心に回り込んであげる力が強いのだと考えています。傘を手のひらに乗せて立てたりする遊びや、スプーンに卵をのせて走る時のバランスに似ています。脚を斜めに差し込める方が、より横方向のコントロールが可能になる身体の使い方であると考えられます。
身体能力で重要な部分
上半身

上半身は進行方向に傾いている方が素早く動ける気がするかもしれませんが、上半身はまっすぐ保てる方が良いようです。むしろ脚が斜めに差し込まれているときには反対側の腕が挙がっているシーンをよく見かけます。このような事実から考えてみると、サッカーのアジリティ(方向転換能力)はラグビーやアメフトとは異なり、ボールに合わせる技術やステップワークが重要だと考えられます。上半身の動きは爆発的な加速より、効率のいい減速動作やバランスのために使われています。
股関節と脊椎

脚を斜めに差し込んでいる動き自体はたくさん観察することができますが、本当によくみてみると実はどの選手も骨盤が傾いています。骨盤が傾いているということは、おそらくそこまで股関節は内転していないと考えられます。サッカーだけに関わらず、スポーツは撮影アングルによってかなり動きが違って見えてしまいます。ですが、本来股関節はあまり内転する関節ではありません。股関節がたくさん内転すると股関節は不安定になったり、鼠径部を痛めたりしてしまいます。でも実際は脚を斜めにしている。そして両肩を結ぶ線は明らかに角度が異なって見えます。ここから考えられる結論は上半身が非常に柔らかいということです。
胸椎

ヒトの上半身は脊椎と呼ばれる沢山の節からできています。そしてそれは頚椎(首)、胸椎(胸)、腰椎、(腰)、仙椎(骨盤)から構成されています。頚椎は7個、胸椎は12個、腰椎は5個、仙椎は仙骨という大きな骨の塊として1つ存在しています。そこに頭部が乗っかっています。では今回のように、横方向に上半身の柔軟性が高い場合、どこが柔らかいのでしょうか。
答えは胸椎という胸の部分の背骨です。胸椎はまず第一に数が多いということが言えます。例えば一つの胸椎(の関節)が1度動けば、12個あるため12度動くわけです。腰椎は横の動きに弱くそもそもあまり動きません。その上数も5つです。そして頚椎は主に頭部の位置を立て直すために働いています。肩甲骨の動きと関係性が高いのも胸椎です。以上の点から特に胸椎の柔軟性は軸足を斜めに差し込む身体の使い方と強く関係していると考えられます。
つま先立ち

足部の使い方にも特徴があります。それは皆つま先立ちが上手だということです。軸足が斜めになっている選手は、みんな前足部が安定しています。ただ踵が浮いているといいという訳ではなく、前足部で立っている上で上半身のバランスが取れていることがパフォーマンスの高さの現れであると言えます。バランスは支持基底面の大きさと重心の高さによって難易度が変わります。支持基底面とは床と触れている身体部分を指します。足の裏が全部ついている状態より、つま先だけ接している状態の方が支持基底面は小さいので、バランスの難易度は上がります。そんな中で上半身を柔軟に使う余裕がある、これも身体の使い方として優れている点であると言えます。
邪魔している筋肉

上半身は胸椎の柔軟性が重要です。胸椎は肋骨などから構成される、胸郭という肺の入れ物と関係しています。肋骨や胸椎、上腕骨(二の腕)、そして骨盤に付着する筋肉に「広背筋」という筋肉があります。この広背筋という筋肉はこれらの部位に付いている筋肉で、脚を斜めに差し込む事を邪魔すると考えられます。
ストレッチ
広背筋を伸ばしたり、関節やその周りの組織を伸ばすのにいいストレッチです。実際の動きにも似てるしイメージしやすいと思います。
まとめ
サッカーを見ていると、脚を斜めに差し込むシーンをよく見かけると思います。実際のプレーをよく分析して、解剖学や運動学で理論的に考えてみると少し違ったアプローチもみえてきます。以前上半身の重要性を別記事でも紹介しておりますので、興味があればご覧になってください。
いかがだったでしょうか?当ブログではできるだけご本人に役立つものを提供できるよう、わずかながら実践できる運動まで合わせて紹介できる、実践型のブログを目指していきます。ぜひご興味のある方へのご紹介などよろしくお願いいたします。