デュエルについて10000字でまとめてみた

オフェンス

チーム戦術を活かすための個の強さ

ゾーンディフェンスを勉強していると、システムを機能させるには、前提に選手の個の強さがあるということがわかってきました。(個の弱さをシステムで補う事も可能ですが)ディフェンス面から個の強さを考えていましたが、結果的には攻守の領域どちらでもデュエルの概念が重要であることがわかりました。

デュエルを定義する

デュエルは二つの局面に別れています。

  1. ボール保持者(オフェンス)と非ボール保持者(ディフェンス)が別れていて、ディフェンス側がオフェンス側からコントロールエリアの奪還を狙う局面。
  2. ルーズボールやスペースに出たボールを追う展開でオフェンス側とディフェンス側がはっきりしない局面。

サッカー自体が大きく分けると、攻撃・守備・トラジションに分けることができるため、攻守がはっきりした局面と、攻守権がはっきりしない局面でデュエルがあることは想像しやすいかと思います。

どちらにも共通して言えることは、デュエルはディフェンスの技術だけを意味するのではなく「攻撃権を得る・守り抜くための技術」であることがわかりました。

攻守権の奪い合い

球際を争う局面というのは、攻守の切り替えが行われる瞬間でもあります。ルーズボールを奪い合うこともあるでしょうし、攻守の逆転(オフェンスからディフェンスがボールを奪う)の局面のこともあると思います。「球際の強さ」とは「攻守権の奪い合いの技術」であると言えます。

サッカーはスポーツの中でも特に攻守の切り替えが頻繁に起こるスポーツに分類されると思います。アメフトやラグビーなんかは攻守の切り替えはありますが、サッカーほど流動的ではありません。

バスケも実はレベルが上がれば上がるほど、ディフェンスがスチールすることはほとんど起こらなくなります。集中して攻守の切り替えが起こる場面は、得点後などの局面を除けばリバウンドでしょう。サッカーはバスケのゴール下以外でも高頻度でリバウンドが起こっているような状態です。

バスケのリバウンドはサッカーではこんな感じになります。

ボールコントロールエリアにボールを収めているものが「攻撃」側であると考えていいと思います。お互い攻撃権を得るためにボールコントロールエリアにボールを収めようとゴリゴリやり合うのが「デュエル」であり、その技術を「球際の強さ」と呼ぶのでしょう。こんな風に考えることができると、反則とフェアプレーの線引きが自分の中ではっきりわかるようになります。(僕はあまりジャッジに関する現状はわからないのですが、よく海外のレフェリングと国内のレフェリングのレベルの違いなんかを言うのはこの辺りに関係しているのかもしれません)

余談なんですが、バスケがバスケらしさを持っているなーと思うのは、ゴールが比較的簡単であることです。100点とか30ゴール入るスポーツってあまりありません。そのゲーム性から、攻撃と守備って概念だけでなくて、「絶対攻めきる技術」であるリバウンドが発展していくのって面白いですよね。攻めに対する守備じゃなくて、攻め切らせない守備を考えるってのはいつかサッカーにも発展するかもしれませんが、とにかく得点感覚が違うからなぁ。余談です。

デュエルの種類

定義から分類すると、デュエルの種類は

  1. 基本的デュエル
  2. ディフェンス的デュエル
  3. オフェンス的デュエル

とカテゴライズできるようになります。基本的デュエルは、攻守権がはっきりしていない、ルーズな状況でのデュエルです。この時のデュエルはオフェンスとディフェンスがはっきりしていないために、どちらも共通している使い方があります。この時の技術がまず基本的な技術になります。そこから派生して、ディフェンスの役割に回っている際の技術、そしてオフェンスの役割である時の技術があります。

デュエルに必要な身体の使い方

コントロールエリアにボールを収めるにはどんな技術が必要でしょうか?局面にもよりますが、間違いなく必須の技術は「ボールと相手の間に入り込む技術」です。そのためには骨盤や肩甲骨を相手の前方に入れていったり、力でやりあうこともあるでしょう。単純に自重が物を言うかもしれません。ディフェンス側、オフェンス側であるか、また完全にルーズボールであるかによっても必要な能力は変わりますが、ステップワークとバランス、体幹の強さが一番求められると思います。特にサイドステップや低重心化に必要な身体機能は間違いなく重要です。大雑把に言うと股関節外転に関する能力ですね。それと、ただ単純に筋力や重さがあると強いかと言われると、必ずしもそうではありません。ステップワークのうまさは特にディフェンス側にはかなり重要になります。

基本的デュエル

ボールと相手の間に入り込む技術

例えばこんな感じでルーズボールを追っていたとしましょう。このままだと赤いエリアを持つ選手がボールを収めてしまいそうです。ですがこの時青エリアがなんらかの方法で赤エリアの前に入ることができれば、自分でボールを保持できる可能性があります。逆の目線から見れば、赤はどのように自分のコントロールエリアを保持して攻撃に移ることができるかが重要になってきます。ではまずこのようなポジショニングで優位になるための技術を考えてみましょう。

肩甲骨・臀部を差し込む技術

デュエルに必要な部位は「近位」

デュエルで相手と接触する部位は、下半身は骨盤と大腿の近位、そして上半身は肩甲骨と上腕(二の腕)の近位だと考えてもらって結構です。近位とは「体幹に近い部分」のことです。

理由として、まずサッカーでは相手を打つ行為は反則であることが挙げられます。これは手先のような主に身体の遠位(末梢)で行われる運動であるため、危険なプレーをしない意味でも重要です。

それに引き換え、太腿や上腕、骨盤、肩甲骨をプレーの中でぶつけあうことはあまり大怪我には結びつきません。(もちろん肘打ち膝蹴りはダメですけど)身体に近い部分であるほど、相手を打ったりしにくいですよね?

サッカーの代表的な反則は、以下の通りです。

トリッピング:相手をつまずかせる。あるいはつまずかせようとする行為のこと。
ジャンピングアット:相手に飛び掛る行為のこと。
ファールチャージ:相手に不用意にチャージすること。
ストライキング:殴ったり、肘などで相手を打つ、または打とうとする行為のこと。
プッシング:手で相手を押す行為のこと。
ファウルタックル:ボールを奪うために、ボールに触れる前に相手に接触すること。
ホールディング:相手を抑える行為。

本来は足先や手先で相手に触れること、ボールとは無関係に相手に触れることは反則になってしまいます(触れることが悪いわけではなく、ボールと選手の関係が前提にあったコンタクトは許されるわけです)

スピードと力、どちらが重要か

近位が重要な理由に、遠位はスピードがあるものの、力が足りないという問題があります。手先はまず最初に相手とボールの間に入れることのできる部位かもしれませんが、手先では向かっていく相手を抑えて止めることはできません。相手を止めて自分が前に入るためには、手先で相手をやり込めるのではなく、二の腕、肩、肩甲骨や胸郭といった近位の分節を差し込まなくてはいけません。

手先や足先はすごいスピードが出せるようにできていますが、相手からもすごい反動を受けてしまうと言えます。これはテコの腕や角速度など、力学的な要因が大きいといえます。誰かの手先を、二の腕や肩を上から押してみてください。そしてどちらに強い抵抗感を感じるか体感してみていただけるとわかります。人間の身体の構造的にも、近位は大きい筋肉が多く、末梢は小さい筋肉が多いです。そもそもの筋肉の大きさが違うことからも近位の分節(肩、二の腕、骨盤、太腿)がデュエルに適している部位であることがわかります。

実際手先で相手を抑えようとすると、肩を脱臼させることがあります。(これはもちろん既に初回脱臼をしてしまっている選手であるということがほとんどですが、)手先で相手を抑えようとしても近位である肩関節が安定しないのです。デュエルが手先だけでは成立しないことは、こういったことからもわかります。

骨盤は一番大きい分節

「近位」と呼ばれる部分の代表格は、骨盤です。骨盤は頭蓋骨並みの分節(身体のパーツの単位)で、重量も安定性も優れています。さらに骨盤がデュエルに向いている点は、両側の股関節に挟まれている構造であると言えます。

両側の股関節に挟まれている構造をしているため、地面に接している方の脚の力を伝達しながら相手の前のスペース(ボールと相手の間)を押し入ってできることができます。もし右脚で地面を押す力がないと、左脚で相手を押す土台がなくなってしまいます。また骨盤そのものの真下がボールコントロールエリアになっていること、体幹の真下になっていることが多く、上半身の重みを載せている場所である(重心的な)ことも安定性に関係していきます。

肩甲骨は自由度がある

肩甲骨は、腕か脚かの違いはあるものの、本来は骨盤と相同な組織のようなものです。ですが肩甲骨は非常によく動くことが骨盤と違います。また、左右分かれており、骨盤ほど左右の腕の関係性は強くありません。脚は地面を介して左右を強調させて強く押しますが、腕の場合支えてくれる反対側がありません。

地面は脚で押すしかありませんので、腕を使って相手を押す場合はもっとたくさんの部分を使っていることになります。地面→左(右)脚→骨盤→胸郭→左肩甲骨→二の腕といった順に力が伝わっていきます。体幹のトレーニングが必要なのはこのように地面の力を有効に脚や腕に伝達するためであるわけです。走っているどのタイミングで相手とコンタクトするかも重要です、クロスステップはサイドステップより踏ん張る力はやや弱くなりがちですので、DFは意識して避ける必要があります。逆にOF側はスピードに乗ったクロスステップをしながら腕をガイドのように使って相手の力をいなすことも時には必要になります。どうしてもベストな身体の向きやステップワークを踏めない時もあります。攻撃権を得た相手に後手になってしまった場合、上半身をうまく使っていく必要があります。

相手を押し出す

勢いをつけてぶつかるとファウル

これは特に危険な動作ですが、デュエルで勘違いしてはいけないのは「強くヒットする」ラグビーやアメフトのような体当たりです。誤解を招かないためにもお伝えしておきますが、ラグビーでも本来ヒットするようなタックルではなく、「相手にまとわりついてスピードを落とさせる」テクニックを指導しています。相手とデュエルをする場合には助走でスピードをつけて相手に向かってはいけません。「強く当たろう」「球際は気持ち」と、正しい技術指導を怠ると、つい力を入れやすいヒット系のタックルになってしまいます。すごいスピードで突っ込んでくる、手が出るなどの行為はルール上もパフォーマンス上も良いとは言えません。

スピードが制御された中で押し合う

この指導動画は何度も拝見させてもらっています。かなりサッカーのデュエルに必要な要素だと思っています。ラグビーやアメフトのようなコリジョンスポーツはコンタクトに関する理論化や指導が進んでいるため、サッカーは学ぶことが非常に多いです。タックルの指導は、「距離を詰めて相手と接近するに連れてスピードを徐々に上げながら行う」「一撃で止めるのではなく、相手のスピードを徐々に落とさせる」「パワーではなく相手と身体を合わせる」ことが重要であるとしています。(ややサッカーに合わせて意訳)つまり、デュエルで重要なことは「グイッと押す感覚」であると言えます。この動画をみれば、サッカーのデュエルも本来は相手と触れ合った瞬間からグッと押すことが重要であり、スピードをつけて勢いよく当たることは危険なプレーであることがわかります。

オフェンス的デュエル

デュエル自体はボールをコントロールエリアに収めることを目標にしています。相手と身体での争いをすることだけが重要なわけではありません。オフェンス側からの目線でデュエルを考えると、既にコントロールエリアにボールを収めている場合(オフェンスになっている場合)、ディフェンスは逆にコントロールエリアを奪い取ろうと肩甲骨や骨盤を差し込むためのアクションをしてきます。こういったアクションに対する対応がオフェンスには必要になってきます。

下半身を使う

オフェンスはディフェンスから離れていることができれば、ボールを取られる心配はありません。密着されてしまうとコントロールエリアを奪われる可能性があります。つまり、オフェンスは自分の行きたい方向やスペースへ弾き飛ばされるように、肩甲骨や骨盤をうまく使うことも必要です。動画をご覧ください。ちょうどいいところから始まるようになっています。(↑)

図は動画の解説です。ディフェンスは後ろからオフェンスのコントロールエリアへ侵入、または相手のボールコントロールエリアからボールを引き剥がすことを狙ってきます。オフェンスはそれに対して自分の太腿で相手の侵入をブロックします。ディフェンスの次の狙いは、自分のコントロールエリアにボールを収められなくてもいいのでオフェンスのコントロールエリアからボールを外へ出して、もう一度ルーズな状況を作り出すことです。そのため、ボールを蹴り出しにいくディフェンスに切り替えます。オフェンスは相手の侵入を大腿部で防ぎ、かつ臀部・骨盤をディフェンスとボールの間に滑り込ませてコントロールを維持しよう努力します。ですが最後にはバランスを崩してしまい、ボールもロストします。

別のアングルから見てみますと、(↑)実際は進行方向が縦ではなく斜めになっています。ディフェンスはコントロールエリアの奪回、つまり完全に攻撃権を奪うことはオフェンスによって阻止されてしまいますが、ディフェンスが微妙にボールを突っついてボールの進行方向を変えています。これによってオフェンスはこのスピードの中で方向転換をしなければならなくなり、結果的にボールをロストしてしまいます。ディフェンスはこんな風に、方向転換を余儀無くされる方向にボールを突っつくと状況を打開しやすいと言えます。(そのまま相手にボールコントロールされにくいためです)特に武藤選手はオフェンス的デュエルを意識して使っているように思えます。

オフェンスも「ディフェンスのボールコントロールエリアの侵入」を防ぐために太腿や臀部、骨盤を使っています。では肩甲骨や腕はどうでしょうか?

上半身はどう使うか

肩甲骨が骨盤と違う点は、自由度があることです。つまり骨盤は一塊であるのに対し、肩甲骨は左右に分かれている点だと言えます。左右に分かれているため、骨盤より少し動かすことができます。骨盤も厳密に言えば仙腸関節や恥骨結合がわずかに動きますが、ほぼ目に見えません。よく前傾とか後傾とか言われているのは(特に美容関連など)股関節と腰椎の動きであり、骨盤にある関節が目に見えて動いているわけではないと考えてください。肩甲骨は肩鎖関節、肩甲胸郭関節、ついでに胸鎖関節の関節がかなり動いて、目に見える運動を生じさせています。これが自由度があるという意味です。そのため手は足より複雑な差し込み方ができます。

もう一つ、土台になっている体幹に関してです。骨盤はもう体幹と一体化している(というか骨盤自体がそもそも体幹なので)ため、骨盤を差し込むにはステップワークをしっかり準備しないとバランスが崩れます。ですが、肩甲骨は胸郭の上に乗っているため土台となる胸郭の位置によって腕を差し込む位置を変化させることができます。体幹を前傾させたりするのはこのためです。体幹を前傾させた分だけ、肩甲骨を前に出せます。そこから腕を差し込めば、相手より先に自分の肩甲骨と二の腕を相手の前に滑り込ませることができ、相手を牽制できるかもしれません。

そしてもう一つ特徴的なのは、ロックとして後方へ手を伸ばせる点です。大腿や骨盤は後ろに出すことはできませんが、腕は後ろに出しながら、自分はボールとともに前に進むことが可能です。そのため特にオフェンス的デュエルでは上半身を使って、自分のボールコントロールエリアへ侵入してくる相手を牽制する技術が必要になります。

ディフェンス的デュエル

ディフェンスの優先順位

  1. 自分(ディフェンス)のコントロールエリアにボールを収める
  2. 相手(オフェンス)のボールコントロールエリアからボールを追い出す

これがディフェンス的デュエルを行う場合の優先順位になります。そのためには何が必要になるでしょうか。

ステップワーク

ディフェンス的デュエルは、基本的には相手に並走することがまず第一だと考えてください。足を出してカットしたりすることも可能ですが、実は正面を向いて足を出すのは、一か八かになります。もしボールが運悪く相手のいいところにボールが転がってしまったり、躱されてしまった場合後が無いからです。もちろん、ディフェンスが前を向いてボールを奪えることは次への展開が早くなり望ましいことなのです。でもそれはできればインターセプトやトラップした瞬間など、別のタイミングで狙うべきだと思います。完全にディフェンスに回った場合のデュエルは一度並走することで、再び攻守権がルーズになる瞬間を創り出すこと、つまり距離を詰めることが重要になります。そのためには相手の突っ込んで来るスピードに負けない加速力と、前に向かってくる相手に合わせる後ろ方向へのステップワークが必要になります。

実際の局面から

これはいわゆる1vs1みたいな状況です。(左斜め後方から追いかけてくるDFもいますが)オフェンスは前を向いてボールを奪って攻撃の起点になった、カウンターの局面です。ディフェンスは正面を向いてオフェンスと向き合います。この時、前を向いて走ってくるオフェンスと後ろを向いて追いかけなければならないディフェンス、どちらが有利でしょうか。後ろに向きを変えて走らなければならないディフェンス側の方が不利と言えます。そこでディフェンスはオフェンスを狙った方向へ誘導して、なるべく自分にとって有利なステップワークが出来る方向やタイミングに誘導します。徐々にディフェンスとオフェンスの距離が詰まっていくのがわかると思います。最後はディフェンスとオフェンスが同じ方向を向いて距離を詰めて、もう一度コントロールを奪いに行きます。これがディフェンス的デュエルに必要なフットワークです。

理想的なフットワークは

  1. 相手が加速した瞬間に
  2. 相手と同じ身体の向き(進行方向)で
  3. クロスステップができること
  4. 最後はサイドステップで相手のコントロールエリアに侵入すること

です。サイドステップは、歩幅を大きくしづらく、次の一歩が出にくいためクロスステップと比べるとどうしてもスピードが出ません。クロスステップで相手オフェンスのスピードについていくことがまず第一になります。1、2の条件はそもそもこれが出来ていないと、逆を突かれたりして抜かれてしまいます。3を行うための準備として、身体の向きをコントロールしたりします。4は基本的デュエルの技術です。つまり、3が出来た瞬間に攻撃と守備の関係はルーズになっていると言えるのです。そのため、ディフェンスに特に重要な技術は「相手に合わせてクロスステップが踏めるフットワーク」であると言えます。

突っつく

身体の使い方が正しければ、絶対デュエルは負けないのでしょうか?そうではありません。ベストを尽くしても状況が整わない時もありますし、単純に相手の方がフィジカル的に優れていることもあります。そんな相手とまともにやり合う事は決して最善の手段ではありません。もちろん勝負をしなければならない状況もありますが、その他の選択肢を理解していることも重要です。

例えば、方向転換やスタートに失敗し、オフェンスに対して距離を詰めることが出来ないこともあります。その場合、遠くからボールをつついて相手のコントロールエリア外にボールを追い出すような技術も必要です。相手の進行方向と違う方向に蹴り出すことが出来れば、相手は方向転換を余儀なくされてボールをロストする時間が長くなったり、余計なプレーが必要になりディフェンスとしては及第点であると言えます。相手と明らかにフィジカル的なミスマッチがある場合も、距離を一気に詰めずに相手の懐からボールロストをすることを第一優先にすることも必要です。デュエルのフィジカル勝負な点は非常に重要ですが、必ずしもそれに固執する必要はないことを理解することが大切です。

デュエルに必要な身体能力

股関節のモビリティ

デュエルはボールコントロールエリアのぶつけ合いであるとも言えます。ボールをエリアに収めることが目的なのですから、ボールコントロールエリアは大きい方が有利です。ボールコントロールエリアは、基本的には「両方の膝の下を結んだ範囲内」であると言えます。つまり、ただ棒立ちでいるより相撲の四股のように股関節が開排する方が有利であると言えます。実際デュエルが上手い選手はこんな風にガニ股でお尻をぶつけていける選手が多いと思います。

股関節の屈曲・外転・外旋

実は股関節の可動域は、ある程度生まれ持った骨格によって特徴が決まります。(その内股関節のことだけでまとめをします)そのため、必ずこのようなガニ股で重心を落とす動きがハマらない選手もいます。特に海外の選手では人種による特徴で、あまり股関節を曲げなくても方向転換やスプリントがハイフォーマンスで発揮できる選手もいます。アジア圏の選手は、大抵は骨格的に上の図のような動きができないことはありませんが、中にはこの開排の動きがあまり得意ではない選手もいます。

特に開排に骨性の制限がない場合は、相撲スクワットを行なってみると股関節の可動域が広がるのが実感できると思います。手で重りを持つのもありです。(負荷ではなく可動域広げるためです)

バランス

安定するのは股関節開排位

デュエルする際に転んでいてはお話になりません。相手と身体をぶつけ合って攻守権の奪い合いをするのですから、バランスを崩した方は守備に回らなければいけなくなります。その場合、図の赤い範囲(ボールコントロールエリア)は、運動学的には「支持基底面」であると言えます。支持基底面とは、身体を支えるために床に触れている部分の範囲のことで、大きい方がバランスが良いと言えます。また、重心(実は一言では重心と言えませんが、イメージしやすいのでこう説明させて頂きます。)も低い方がバランスは良いです。(もちろん重心の高さを利用することもありますが)ですので、股関節を開排していた方が安定します。ですが、不安定になった時に持ち直すバランスも重要です。

相手に押されることもある

ディフェンス的デュエルが後方からオフェンスとボールの間に入ってこようとする特性上、後ろから押される形になることはルールの範囲内で起こりうるかもしれません。また、多少ファウルだとしても耐えることでアドバンテージがある場合もあります。そのため、特にこういった姿勢になることが多いです。このような状態は肉離れの原因になることが多く、バランスとハムストリングスの柔軟性が必要になります。一流の選手はボディバランスがいいと言いますが、具体的にはこのような後ろから押されたときのバランスが良いです。

本当は個別に可動域や骨形態の評価などを行なってからやるかどうか決めますが、こんな感じのエクササイズなど行います。デッドリフトのフォーム固めが先だと思いますが、

上半身

上半身の差し込む時の手の向きです。手の甲はあまり相手を強く「押す」ことができません。だいたい相手を押す時は手のひらです。これは、肩の構造と機能が影響しています。手のひらで相手を押すとき、肩関節は「内旋」という運動をします。これは自分の腰の後ろに手を回すような動作です。これは肩を後ろに引くのに広背筋という肩を内旋させる筋肉を使うためです。

このように掌を下に向けてゴムを引く練習など行ってもいいかもしれません。引く動作は練習しないと関節や筋腱を痛めやすいため、導入で簡単な運動から行うことをおすすめします。

まとめ

  1. 球際の強さは、攻撃の権利の奪いあいをする技術や身体能力である
  2. 攻撃権の奪い合いは、コントロールエリアの奪い合いのこと
  3. デュエルは「基本的」「攻撃的」「守備的」に分類される
  4. 基本的デュエルは、攻守がはっきり分かれていない時に起きている
  5. 攻撃的デュエルは、「相手を近づけない」技術が重要である
  6. 守備的デュエルは、「相手に近づく」技術が必要である
  7. 身体能力は「股関節の柔軟性」「肩甲骨の柔軟性」「体幹の安定性」「バランス」が重要。

特にデュエルに関しては、身体能力と同じくらい「ディフェンスの役割」「オフェンスの役割」を知っていることが重要であると思います。個の強さを鍛えながら、チームとしてのディフェンス戦術も取り組む。僕はさらにチームや個人のフィットネスを考えてピリオダイゼーションしていますが、まだまだ今回の記事をまとめて改善する点があるなと思いました。

エクササイズに関しては、実際の動作に似た無茶苦茶簡単なものを紹介しました。星占いみたいな誰かは当たってる気がするし、当たらないこともあるよねみたいなものです。

本来個別に合わせたトレーニングは、その人の特性を評価しないと組めません。実際に個別でみて欲しい場合は直接お問い合わせからご相談ください。

いかがだったでしょうか?当ブログではできるだけご本人に役立つものを提供できるよう、わずかながら実践できる運動まで合わせて紹介できる、実践型のブログを目指していきます。ぜひご興味のある方へのご紹介などよろしくお願いいたします。