トラップの分析

トラップ

トラップ

どんな技術なのか?

トラップはボールを「止める」技術であると言われています。ですが実際にはどうでしょうか。ゲームを見ていると、選手が止まってボールを受けることはほとんどありません。さらにその中でボールをその場に止めることはほとんどありません。つまり、実際のトラップはボールを止める技術ではなく、「ボールを自分の思ったところに移動させる技術」なのでしょう。興梠選手も実際のプレー中に、たくさんの首振りやアイコンタクト、ステップワーク、ボールコントロール、ボールタッチを行なっています。日本でも本来はこれら一連の流れを「トラップ」として扱っているわけですが(指導者の方が全員ボールを止めるだけの練習をしているわけではないと思います)、練習の中で切り取られているのが「ボールを止める行為」になってしまっていたのではないでしょうか。こうして言語化されれば理解できますし、首振りやコントロールの方向性が重要であることは、指導者の方々も無意識的に理解されているはずです。

コントロールオリエンタード

実際のプレー中に見られるトラップは、ただボールを止める技術ではありません。スペイン語で「コントロールオリエンタード」と呼ばれている技術があります。ボールを止めることではなく、ボールコントロールに方向性(行きたい場所、向けたい身体の向き)「方向付けされたボールコントロール」を意味します。大体の意味は僕が考えていることと同じなのではないでしょうか。サッカーの多様性が文化に現れている国はスペインです。プレーを示す言葉で、日本語に当てはまる言葉がないというのはすごいことですね。そして何より、実際のサッカーの中のプレーを反映させた言葉である点が素晴らしいなと思います。

あえてサッカー以外の環境から考えてみる

実際のサッカーの環境では、コントロールオリエンタード、つまり、「どこにボールを運ぶか」「どんな身体の向きになるか」の方が重要視されており、向かってくるボールや動いているボールに対して「どのように触れるか」はあまり追求されていません。僕はサッカーの戦略的、技術的な理解をしつつ、身体の使い方やフィジカルトレーニングを追求していきたいので、「ボールタッチ」に必要な点も考察してみようと思います。と言うわけで、こちら(引用元ネタ→https://youtu.be/ZuIY-iTYtRE)から考えてみましょう。

トラップは意外とちゃんと当たってない

実は、よく見ると結構変なところでトラップしているんです。内くるぶしやスネなんかでもトラップしています。おそらく、ちゃんと当たっていないので本人の予想外の場所へトラップしてしまっていると思います。

こうなると失敗かなーと思うのですが、実際選手はこの後もボールコントロールを続けたりしています。トラップは「ボールを自分の思ったところに移動させる技術」ですので、そういう意味ではうまくいってはいないでしょう。ですが、リフティングが続けられていることを考えてみてください。予想したところにいっていないのに、ボールに追いつくってすごくないですか?実は、「ボールについていく」ことがトラップの重要な要素であるようです。いくつか例を紹介します。

軸足を浮かせる

トラップする瞬間に軸足が浮いている、これにはまず衝撃吸収の意味があるようです。でも「浮いているから衝撃が吸収される」は理論的に無理があるかもしれません。ボールの重さと身体の重さには、かなり大きな差があります。

さらに言えば、ボールだけが移動すればいいのでしょうか?ボールを「止める」技術だと広く認知されているため、そのボールに自分自身がついていくこと自体も技術であるとは考えが及ばないかもしれません。

トラップにもう一つ必要な技術は、「そのボールについていく技術」であるといえます。では、この二つの技術と、それに必要な身体能力についてまとめてみます。

トラップに身体がついていかない

トラップが成功か、失敗か。それは「ボールを止められたかどうか」ではなく、「狙った所にボールをコントロールできたか」「それについていけたか」になるわけです。そういう意味では、これらの例は「リフティングを続けられる場所」へボールをコントロールできず、かつ身体をボールについていかせることもできなかったということになります。

そしてボールについていくことができなかった時は、バランスを崩している傾向にあります。特に、下半身が慌ててボールを追いかけようとするのですが、上半身がついていかないようです。

つまり、トラップの際に軸足が浮いているのは、衝撃吸収のためではなく、自然と「次のプレー」に向けた方向転換や移動が先行して行われているためであると言えます。

トラップの分析をするならここを見る

選手の指導を行う場合、このように行うと見分けがつきやすいです。ただしこれは身体の使い方に特化したチェックです。

  1. ステップワークを行い、トラップした瞬間足が浮いているか。
  2. トラップした後上半身のバランスが崩れていないか
  3. 足首の固定に問題はないか

1は基本的には移動(前に行く、下がる、横へ行く、向きを変えるなど)に伴うため、実はバッチリパスが来ることでその場に釘付けになり、失敗することもあります。前提条件としては確実に1が行われていることが重要になります。2は1ができずに且つ予想外の所に飛んで行った場合になります。ですが胸トラップで傾きすぎたり、トラップする場所が自分のコントロールエリアから離れてしまっていると上半身のバランスが崩れてしまい結果的にコントロールしたボールについていけなくなります。3は小学校低学年や初心者などに注意するポイントです。ほとんどは1が問題です。

まとめ

トラップが「ボールを止める技術」ではないことは既にみなさま肌で感じていることだと思います。ではボールに方向性を持たせるとすると、「ボールについて行く」こと自体が身体能力としてかなり重要であると思いませんでしょうか?正確には「ボールに先回り」するくらいのステップワークが必要になります。

今回は単純に「ボールについて行く」ことの重要性を述べました。

では具体的なステップワークは何を練習すればいいかとなると、実戦に起きうる場面を想定しなければいけませんん。

次回は流動的なサッカーの局面の中で、ボールや身体のコントロールオリエンタードに必要な要素を解説します。