PKに現れる身体能力 ジョー選手 対 西川選手

GK

PKは試合を決める

PKは圧倒的にキッカー優位です。そして守る方からするとファウルをきっかけに得点の機会を与えてしまうわけで、非常に罰が悪い雰囲気になります。ただの失点よりもゲームを崩すかもしれません。

逆に考えると、GKがセーブした時は大きくチャンスになります。PKは奪われた方にも、そんな逆転の要素を与えてくれるんじゃないかと考えています。ではPK対決で優位になるような身体の使い方はあるのでしょうか。実例から身体の使い方を分析してみます。

ジョー選手vs西川選手

2018/08/26 名古屋vs 浦和 元動画はこちらですね。

ジョー選手と西川選手のPK対決です。

ちなみにこちらで玉田選手のこぼれ球に対するリアクションについても言及しておりますのでよろしければご覧ください。PK止めた西川選手、お見事です。

ゴールへの嗅覚 色んなプレーを見たい方へ

2018年8月28日

勝負は軸足から始まる

ジョー選手が軸足を地面に着けた時です。実はもうこの瞬間からかなり駆け引きが始まっています。まずジョー選手から読み取れる情報ですが、①軸足がやや内側を向いている。②ボールと同じくらいの深さで踏み込んでいる。といった点が挙げられます。西川選手は①右足はすでに離地している。②左足は接地。身体は接地面に対してほとんど右側にある。といった点が挙げられます。

ジョー選手から読み取れること

まず、軸足が斜めに向いていることで減速動作が行いやすくなります。ですがやや内側に向くことでキックが可能な範囲が狭くなります。

PKでもこの動画と同じことが言えます。インサイドキックの蹴り方がPKに応用が効くんですね。軸足の向きは、「キックを蹴れる範囲」のちょうど真ん中くらいを向くのだと考えてください。つまり軸足の方向は「絶対キックが飛んでくる方向」ではありませんが、そこを中心にある程度の範囲が決まってきます。そして今回の場合、ジョー選手の軸足のつま先が若干内側を向いている、これはキックが西川選手からみて右方向へ飛んでくる可能性が高く、左側へ蹴るにはかなり軸足の股関節のコントロールが必要になることが伺えます。つまり「腰が回せる」かどうかですね。

インサイドキックのトレーニングに必要な知識 理論編10000字

2018年7月5日
膝の回転運動〜のくだりに少し似たことが書いてあります。不親切な文字数なので、暇で仕方がないときに読んでみてください。

西川選手から読み取れること

西川選手はすでにいくつかのアクションをして、素早くボールに反応するための準備をしています。既にこの瞬間には右側へ行くと決定しているようです。もしかしたら事前に予備情報があったりしているのかもしれませんが、プレアクションを確認してみましょう。

助走の時点で、軸足を踏み込むタイミングまでに身体を全体的に前方へ動かすようなアクションがみられます。最初はマイケルジャクソンのように身体をまっすぐにしたまま前傾して行くような動きです。そしてジョー選手が軸足を踏み込む直前にはやや踵が浮き始め、スクワット姿勢のまま前傾していきます。

これはボールがどちらに飛んで行くかに関わらず必要な動きです、PKで準備しない選手はいないと思いますが、こういう身体の使い方は教えておかないといけないかもしれませんね。もちろん基本技術を習う過程でマスターするかもしれませんが…

別角度でプレアクションを見てみたのですが、事前に右で止める前情報があったのかなーなんて気もします。それか飛ぶ方向を決めていたとか。立ち位置も少し右側な気がしますね。プロレベルですし、相手チームのPKキッカーの情報があるのは当たり前なのかもしれないですね。

何にせよこのようなPKを蹴る前に両足を浮かす、そして向かう方向とへ向かって脚を傾けるアクションはほとんどのプロ選手が行なっている身体の使い方です。

ジョー選手の違う方向へのキックと比較する

こちらは2018/3/31の鳥栖VS名古屋で、ジョー選手のPKが権田選手によって見事にシャットアウトされた時の映像です。ジョー選手は結構PK蹴ってますので、参考になる動画がいくつか残っています。ちなみにこの時は、今回とは逆方向へキックします。(デシが膝下型と分類しているキックの方向です)蹴る方向によってジョー選手の身体の使い方は何か違うのか!?そこを考察しようと思います。

この写真ではインパクトしてボールが離れた瞬間(1コマ送りくらい)のジョー選手の身体の向きを比較したものです。なんか違うなーって雰囲気を感じて頂ければ十分かと思います。しかし権田選手も西川選手もそうなんですが、鏡で映ったように同じような動きをしていますね。タイミング的にもこのあたりで動き出さないといけないんだなってことがわかりますね。では、ジョー選手のキックに理屈をつけてみようと思います。

軸足の股関節で蹴る方向を決める

これは同じ瞬間の身体の使い方を比較したものです。まず、ジョー選手の骨盤に着目してください。何となく左の写真の方が、骨盤が大きく見える感じがします。膨張色だからかもしれませんけどw でも上半身や腕の向き、軸足、蹴り足の向きなんかをみると、「骨盤が向いている方にボールが飛んでっている」ように見えませんか?よく「腰が回る」なんて言いますが、このようにキックを蹴る方向は何となく身体の使い方から理解が出来るのかもしれません。そしてそれをGKは一瞬で判断してるのではないかなーと思います。

そしてジョー選手はそれが結構わかりやすいタイプなんじゃないかなって気がします。動画でみる限りですが、結構GKに反応されていることが多い気がします。

西川選手は何がすごかったか

西川選手のすごかった点は、右足の使い方です。

実は西川選手は左足ではほとんど飛んでいません。左足は接地していますが、ほとんど上半身を右へ傾けるための固定点程度の役割しか果たしていないと思います。GKの身体の使い方は非常に特殊、かつ似通っています。この後ボールをセーブするためにジャンプするのは「右足」なんです。

ではこの時の右足の挙動をみてみましょう。

右足はつま先で支えている

右足を使ってセービング出来る範囲 = 守備範囲を横へ広げるためには、横へ向かって進むための力源が必要です。それは何かと言いますと右足のつま先が地面を押す力だと思います。足部について説明します。

特につま先の中でも、小指球と呼ばれる小指の付け根で地面を押しているように見えます。これは西川選手が右方向へ動くのに最も適した場所であると言えます。強い足首と足部の固定が必要になる、すごいプレーです。さらに続きます。

脚を「伸ばす」

右脚の伸びが守備範囲を大きくしていると説明しましたが、正確には脚全体の「伸び」が守備範囲を大きく広げる運動になっているようです。この膝や股関節を伸ばす運動を、足裏全体でなく、狭い足先で出来てしまうというのがすごい身体の使い方であると言えます。これは特にGKに特徴的な身体の使い方なんです。真似できますか?

おわりに

西川選手、PKよくセーブしてくれました。そして素晴らしい身体の使い方を披露してくださってありがとうございます。ジョー選手のPK対策はどうでしょうか?ちなみにもうこうしちゃえばいいんだよって改善案もあります。w色々考えられて楽しいですね。

ぜひ今後もPKの時は今回の考察を思い出して、あっちに蹴るとかこっちに蹴るとか、理論立ててみてください。