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「身体の使い方」を議論するときりがない
サッカーに関する身体の使い方を調べていると、おそらく様々なウェブサイトや参考書などにたどり着くと思います。そのどれもが正しく、悪く言うと正しくありません。
「正しい、一番の身体の使い方」があればとてもわかりやすいし、楽だなぁと思います。ですが実際は試合中の局面、重視したい性能によって「その時に必要な身体の使い方」が異なってきます。
つまり、「どんなことに優れた」身体の使い方かをはっきりさせておくことが大切なんですね。大半の参考書には「どんなことに優れた身体の使い方なのか?」がはっきり記載されていないと思います。
ではインステップキックはどんな性能を重視すると良いのでしょうか?
結論としては、「ボールの速度」です。ロングキック、シュート、フリーキック、全てにおいてボールの速度を追求できることが最も重要だと思います。
では今回は「ボールの速度を追求する」ことに関して、大切なポイントを3点紹介させて頂きます。
そのポイントは
- 足根骨でボールの中心を捉える
- 足首(距腿関節)を安定させること
- スイングスピードを上げること
の3点です!!
では、なぜこれら3点が重要なのかを説明していきます。
サッカーのキックはバッティングに近い
キック動作とバッティング動作が似ている点は、「ボールと衝突することでエネルギーを伝達する」という点です。
ボールは変形する

ハイスピードカメラの動画に、ボールと足とがインパクトする瞬間が収められていると思います。ボールが凹んで変形していく様子が確認できるでしょうか?この瞬間を切り取ると上の図のような感じになります。このようにボールが凹むこと、そして凹んだボールがしっかり戻ることがスイング以上の速度をボールに与えるのに重要であると言えます。
ボールの変形と言われてもあまり実感が湧かないかもしれませんが、皆さんもボールの空気圧が甘かったり、逆に固すぎる経験をしたことはありませんか?これにもボールの変形や元に戻る力が関係してきます。

例えば、空気の抜けた柔らかいボールを蹴るとどんなことが起きているか想像できますか?
柔らかいボールを蹴った時、足にまとわりつくような感覚を経験することがあると思います。ですが、ボールはどんなにいい場所を蹴っても大して飛ばないし、速さも出ないでしょう。
これはボールが柔らかいので変形しやすいものの、空気が少ないため元の大きさに戻る力が少ないために起こります。ボールの反発力ではなく、「スイングで押し出す」力のみでボールが飛んでいるような状態です。

ではボールが硬い場合ではどうしょうか。この場合はボールが凹みにくくなります。表面を撫でるようなキックになってしまい、スピンばかりかかってこちらもあまり飛距離も速さも出なくなります。
ボールそのものがあまり変形しないため、結果的に元に戻る力も少なくなってしまいます。ただこちらの場合は、「ボールが元に戻る力」が欠落しているわけではありません。硬いので変形させるのが難しいだけです。
冬の朝練でボールがカチカチの時、キックが飛ばないことがありますよね。何だか変なスピンがかかってあまり飛ばないのは、ボールが硬くあまり変形していないのかもしれません。
ボールを変形させることが重要
先ほどは理解しやすいように、ボールの空気圧を例にとってボールの変形と元に戻る力を説明しました。
このようなボールと足部のインパクトに関するはボールと足部の「反発比」と呼ばれており、ボールの速度を上げる要素の一つと考えられています。キックを物理的に捉えると、以下の3つの要素があります。
- スイングスピード(膝から下を振る速さ)
- 重さ(蹴り脚の重さ、ボールの重さ)
- ボールと足部の反発比(変形する力と、その後元に戻る力)
これら3つの要素は、「インパクトの際にボールを変形させるために必要な要素」であるとも言えるのです。
つまり
ボールの速度を出す = ボールを変形させる
そして、そのためにどんな身体の使い方をするといいのか?といったことを考えることが大切なのです。
ボールを変形させるための3つのポイント

では、先ほどの物理的な要素からポイントを考えてみましょう。
ボールの空気圧や素材、重さは公式に決まっているため、考える必要はありません。
また、蹴り脚の重さについても、トレーニングで調整するポイントではないはずです。(筋トレで長い目で見た重い脚を作る必要はあると思います)
よって、ボールの変形量を増やすために必要なポイントは以下の通りになると考えられます。
- 足根骨でボールの中心を捉える
- 足首(距腿関節)を安定させること
- スイングスピードを上げること
これらを満たす身体の使い方をすること、ここが今後の身体の使い方に関して重要なポイントになれます。
ポイントの説明
スイングスピードが大切な理由
キックのスイングスピードは速ければ速いほど、ボールに威力があることがわかっています。シュートの威力の大元は、このスイングスピードが速いかどうかなのです。これは「運動量」と言う簡単な物理で説明ができますので、説明は高校の授業や教科書、解説してくれているwebサイトなどを探してみてください。(わからなくても、スイングが速い方がいいキックが蹴れるんだとイメージが分かればそれでいいと思います。)
このスイングスピードに関して、実は蹴り足の膝下を振る筋肉の力だけでは大した球速が出ていないことがわかっています。かなり軸脚の要素が大きいと言うことが近年の研究で判明しつつありますので、軸脚に関するまとめで説明させて頂きます。
スイングスピードには「力源」の意味があり、まずここが足りないとどんなに上手にインパクトさせても絶対的なエネルギー不足になってしまうため、重要な要素です。
スイングスピードは「力源」で、足部は「効率性能」
スイングスピードが力源なら、インパクトの部位や足首の固定はエネルギーを余すことなく伝える伝導効率に関係します。

ボールと足が衝突するとボールが変形しますが、実は足部も変形します。この時、できるだけ足部の変形を少なく済ませた方がボールをより変形させることができます。きちんとしたポイント(足の甲)に当てることは足部自体を変形させないという点、衝撃で一番変形しやすい足首の関節を安定させやすいという点で有用であると考えられます。
まとめ
キックスピードを上げるために必要な要素を説明しました。
これをベースに身体の使い方を説明していく予定ですので、覚えておいて頂けるとお役に立つと思います。
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