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ドリブルって楽しい
残念ながらドリブルもキックも全くスキルがなかった筆者ですが、それゆえに出来ない選手の気持ちはわかります。悲しいほどに。でもこんな出来ない選手の気持ちや体感ってのを理解できるのは、技術指導やリハビリ上役に立つと思っております。ボールを蹴る、触れるってことはサッカーの根っこの楽しさですよね。サッカーは11人でやる楽しさと、個人がボールと戯れる楽しさがあると思ってます。ではそんなドリブルにおける指導上、リハビリ上重要なポイントをお伝えします。
ドリブルの巧さは足さばきの良さ?
犬もドリブルが出来ます。しかもすごく上手に感じませんか?
ここで重要なことは、「なぜ犬のドリブルが上手に感じるか?」です。頭と肩でボールを扱っているのに、ヘタな選手が足でボールをコントロールするよりも、犬の方がよっぽど上手にみえます。
つまり、ボールを上手に運ぶことと、足さばきが上手いことはイコールではないかもしれない。というのが筆者の考えです。
ドリブルに必要な能力は「ボールと自分との関係」を保つ能力
スペインでは、相手(DF)がいて、それを突破するためのアクション(regate)と、思った所にボールを運ぶアクション(conduccion)なんてドリブルを言いわけるそうです。conduccionはボールを狙ったスペースに運部ことで、相手をひきつけたり、割って入ったりする意味合いが強くて、戦略的要素が強いかと思われます。
筆者が言いたいのはそういった役割的な意味合いではなく、相手を抜くにせよ狙った軌道やスペースへ進むにせよ、「ボールと自分との関係」を保つ能力が必要ではないかと言うことです。これはボールを扱う足のスキルではなく、むしろステップワークや加減速、方向転換などの移動動作の方が重要なのではないでしょうか。だって犬がドリブルしても巧く感じるわけですから。
プロ選手はボールとの距離感が絶妙
では犬は何が優れていてこんなにうまいことボールを扱えているのでしょうか。プロ選手と草サッカー未満(もはや選手ではない)を比較すると、その答えが少しみえてきます。まずこちらの動画(アーロンレノン選手のドリブル)をご覧下さい。細かいちょこちょこした動きで、滑らかに動いていますよね。これって実はサッカー選手特有の動きなんです。アメフトやラグビーみたいに、手にボールを持ってるスポーツのカッティングとは少々異なります。なぜこのようにちょこちょこ動くかと言いますと、足でボールをコントロールしながら、ボールから離れないように加減速をしているからなんです。
サッカー好きのおじさんはボールについていけない
おじさんが似たようなことをしている動画です。おじさんはボールがなくてもフットワークが怪しいのですが、ボールを持つとそれが非常に顕著になります。おじさんはボールが離れてしまっています。離れたボールを無理に押さえ込もうとするため、バランスを崩しているようにもみえます。
骨盤の幅くらいの間にボールを収める事
犬とプロ選手はボールがだいたい骨盤の間に収まっています(犬は肩甲帯ですかね)。どうやら、ドリブルが巧く見える選手はボールを大体骨盤の幅の間くらいに収めているわけです。「ボールについていけていない」と感じる指導者の方の感覚は、多分あっています。具体的に説明するなら、この「骨盤の幅」を出てしまっているのが良くないとアドバイスするといいかもしれません。ここにボールを収めながら動こうと思うだけも、格段にボールの扱いが変わります。
前後の位置関係は膝下が目安

左右(側方)方向の目安だけでなく、前後方向にも目安があります。前後方向の目安は「膝下にボールを置けるか」です。ここにボールを収めるようにタッチすると、自然と次のタッチがしやすくなります。膝下でボールコントロールをしようとすると、自然と下腿(スネ)は前に傾いて見える事が多いため、ここを基準にアドバイスするのもありです。このようなタッチ自体は上手にできるのに、実際のプレーになるとこのエリアからボールが出ていってしまう事が多い選手は、タッチそのものより「移動しながら触れる」練習をするといいと思います。
たくさんタッチすれば巧くなる?
ドリブルデザイナー岡部さんの動画です。このようにつま先でタッチするドリブルは非常に滑らかにみえます。冒頭のドリブルですが、ほぼ一歩につき一回タッチしているのがお分かりでしょうか?実はこのように一歩進む度にボールに触れるのは非常に高等なテクニックなのです。「細かく、たくさん触る」とドリブル練習中に言われた覚えがあります。ですが、実際に重要なのは「スピードを出しながら」細かく、たくさん触る事だったのです。
すぐさまボールに追いつく能力が必要

1歩ずつタッチする時、どんな事が起きているのかをイメージした図です。ボールを巧くコントロールするには、コントロールエリアにボールを収めていなければなりません。(ここから出ていると、DFにボールを奪われやすくなります)
ですが、ボールをどこかに運ぶには、ボールをコントロールエリアから外へ出さなければならないのです。(①、②)この②の時間が長ければ長いほど、敵DFにボールを晒している時間が長くなるので、敵にボールを奪われやすくなります。できるだけ早くボールをコントロールエリアに収める状態(③)にしたいわけです。なるべく③の状態を維持するために、1歩進む度にタッチする技術が必要になります。そして、これに必要な能力が「離れたボールにすぐ追いつく能力」なのです。
一歩ずつ触ること
メッシ選手のドリブルシーンです。ハーフラインから爆走してミドルシュート、Jリーグでも割と多くみられるシーンだと思います。よくこの辺りのフリースペースをボールと共に素早く移動している選手は、昆虫のようにカサカサと動いているようなイメージがありませんか?進んでいるスピードと、ピッチとストライド(足の回転数と歩幅)が合っていないようなイメージです。これは前述のように、ボールコントロールエリアにボールを収め続けるために動いているためです。

このシーンは、特に目立ったフェイントやトリッキーな動きがあるわけではありません。ですが、メッシ選手はDFの動きをみながら、右へ行くか左へ行くか、相手を揺さぶっています。これを可能にしているのが、1歩ずつタッチする技術だと言う事です。
一歩ずつ触れるようになる鍵は「歩幅の調整」
岡部さんもメッシ選手も、自分のボールコントロールエリアにボールを収めることができているためこのようなDFを手玉にとるような動きができるのです。足先が器用である以前に、ボールをコントロールエリアに収める移動能力がすごいという事です。
- 一歩につき一回タッチできる
- スピードを上げても同じ事ができる
- ボールをコントロールエリアに収める事ができる
これらは同時に行なっている事であると言えます。では、どんな身体の使い方が出来ると、こんな風にドリブルができるのでしょうか?

メッシ選手はイメージしやすいように映像を反転させています。どちらにも共通しているのは、「歩幅の調整」を行いながらドリブルしているという事です。動画をみると、ボールがたまたま大きく前に出てしまう瞬間もあるし、意図的にボールをコントロールエリアから外へ出し、DFに食いつかせた所を躱す事もあるようです。その際に、歩幅の調整を行なっています。この歩幅の調整は、「タッチする瞬間に少し歩幅を大きくする」事で行われているようです。
この歩幅の調整は、どうやら腰椎の前弯(正確には伸展)と股関節伸展(後ろに反らす)運動が関係しているようにみえます。
この運動によって、まずはボールの前後の距離を詰める事。それがまず「ボールコントロールエリアにボールを収める」ために必要であるようです。
終わりに
まずは、ドリブルは「足でボールを支配する」ものではないという筆者の意見をまとめてみました。それよりも「ボールについて行く移動能力」を鍛える事が重要かなと考えております。後にトレーニングやリハビリテーションの注意など、幅を広げて行く予定です。
いかがだったでしょうか?当ブログではできるだけご本人に役立つものを提供できるよう、わずかながら実践できる運動まで合わせて紹介できる、実践型のブログを目指していきます。ぜひご興味のある方へのご紹介などよろしくお願いいたします。