鈴木孝司選手(FC琉球)に学ぶ
「こぼれ球に強い」、「ゴールへの嗅覚」など、得点力のある選手はチャンスに飛びつく能力が高い。
スーパープレイの中でも個の突出した能力で得点するシーンは、誰の心にも残る。だが実際にプレーで結果を出すFWは、華やかなプレー以外にしっかりと得点する機会を逃さないものである。
実際に結果を出す選手は、どのようなアクションを行っているのだろうか。
2019年 6月19日、現時点でJ2得点王の鈴木孝司選手のプレーを見てみよう。動き出しの速さとは何なのか、アクションから学ぶことがあるはずだ。
FC琉球vsツエーゲン金沢
得点シーンは、攻守の切り替えに伴って生まれた局面だった。左サイドの徳元の攻撃が金沢DFにブロックされ、ルーズボールがペナルティーアーク上方へ跳ね上がると、落ちたボールを拾い攻撃権を手にしようと両チームの選手が集まる。

この時、ポジション的に優位を保っているのはツエーゲンの藤村だったが、後方からスピードのある河合の猛追にあう。ルーズボールの処理がヘディングで行われてしまったこともあり、コントロールエリアからボールを離してしまう。

ポジション的にコントロール優位であるが、この時藤村は不利な条件が多い。スピードがある河合がボールを奪おうと寄せてきているため、その侵入をブロックしなければならないが、ボール自体は上里のいる前方へ移動していく。

上里は冷静に距離を取りつつボールを奪い、相手と入れ替わる。
鈴木は既にこのタイミングでアクションを起こしている。琉球の選手も金沢の選手も、誰一人この攻守の切り替えについていけていない。鈴木だけが時間的な優位を得ていると言える。
全体の中で一番初めにアクションをする。これ自体が見落としがちなポイントである。

ゴールに背を向けず、半身をとってボールを受けられる
その後の鈴木は、誰よりもいい状況でフィニッシュを迎えることができた。すぐにゴールへ迎える身体の向きでパスを受けられたということである。
もちろん、「一番最初に動くことができた」のは結果である。スペース、DFの位置関係、パスの出し手の状態を認知して判断したため動き出しが早かったのであろう。
身体の向き、トラップする足など技術的な面をトレーンングしても、ゲームの局面では発揮できない選手もいる。
ゲームで動き出しが早い選手がいた時、それはトラップやデスマルケに関する実行力が優れているだけではなく、状況判断能力が優れているのであろうということも言えるのである。