FC琉球VS栃木SC 2019.07.06
先取点を取った場面で、富所選手の動き方が勉強になると思います。トラップと一緒に解説致します。
通らないパスコースに立つ

この局面では、鈴木選手が敵ギャップに位置しています。栃木DFも警戒しているのは鈴木選手へギャップを通されることだと思います。
実際はここで鈴木選手が持っても、得点の可能性が高いとは思えません。鈴木選手はもう少し前でボール保持して生きる選手だと思います。ですがセオリー的にはこのギャップを警戒したくなるのがDFとしては本能に近いと思います。ここで面白かったのが、富所選手がギャップ上にいる敵DFの前に入って行ったことです。



DFからしても、鈴木選手へのパスコースは何となく警戒すると思いますが、「ここに出しても味方DFがこのパスコースなら有利だろ」というところにスルスルと富所選手が入っていきます。このコースの延長線上は栃木SCの中盤2枚の視点から見ると、センターバックがいる守備範囲です。「鈴木選手にボールを出させない」ことを意識しているのであれば、「ここは通されても構わない場所だ」と判断しているはずです。

結果的にDFラインと中盤のラインの間でボールを受けることに成功します。この場所でパスを受けることができた富所の興味深い点は、守備時に5バックになる栃木SCのディフェンスラインの要、森下選手を前方に引きずり出せた点です。
これで中央に大きいスペースができます。このスペースを作り出すことができた上に、鈴木選手にアタッキングサードでボールを渡すことに成功します。
わざとセンターバックの選手の前に顔を出すことは、特に敵DFの要になっている選手を前方に引きずり出すには有効な手段であると言えます。
それが「通らないパスコースに立つ」利点なのです。
トラップとパスを蹴る方向、身体の向き

富所選手のトラップはこの向き(右足)で良かったのでしょうか?このままでは敵ゴールに背を向けてしまう時間を作ってしまいます。ゴールに対して正面を向ける方がパスコースも増え選択肢が増えます。
タイミング的には富所選手は左足でトラップすることもできたはずです。でも実際にはしませんでした。

富所選手はここで一度首を振って、鈴木選手がゴールを決めるために走るスペースを確認しています。ここにパスを出すことは意図していたはずです。
問題はここに出すパスを、左足で出すか右足で出すか、そして身体の向きに対してどちらの方向に蹴るかという点です。

富所選手は、身体の向きをフェイントにして本当に出したい方向を向かないことを選んだのだと思います。そしてこの方向へのパスはスピードの速いパスが出せるというメリットもあります。
おそらく身体の向きから読みにくいパスコースであること、パススピードやスイングモーションが速いこと、それを理解してあの向きにトラップしたのだと思われます。
浮くことは当然重要であるとして、パスコースと身体の向きの優位性も頭で理解しつつ身体で覚えたいですね。
局面を打開するノウハウ?
このように実際に崩れた局面で、「何が悪かったか」と同じくらい「何が良くてうまくいったのか?」を考えることは非常に重要だと思います。富所選手は頭と身体で考えてトラップしてます。
このポジションで受けることは、セオリーさえわかってれば真似できることではないでしょうか。
身体を鍛えることと、鍛えた身体を生かせる機会を作れる選手になりましょう!!