ロングキックとストップ動作

ムーブメント

キック動作も加減速が重要

ゴールキック・ロングキックを蹴る時、軸足を大きく前に踏み出します。
これはスイングを大きくするために必要な動きで、かなり大きい歩幅です。

軸足を身体より前に出している。この動きは減速(ストップ)動作です

スイングスピードを上げるために、助走である程度のスピードを出せることはかなり重要です。ただし、助走のスピードを上げ過ぎて蹴る際にキックフォームが崩れてしまってはスピードを出す意味がありません。

前に大きく足を出し加速する分、減速動作も必要です。キック動作にも、スプリントの加速と減速と非常に似た部分があります。助走では上半身が前に前傾していきますが、蹴り終わった後は体幹が後ろに残るといった点です。

軸足が助走のスピードを抑えることで、蹴り足はより早くスイングすることができるようになります。これがロングキックの特徴です。

軸足が止まると、スイングが早くなる

軸足が助走のスピードを抑えると、なぜ蹴り足のスイングスピードが上がるのでしょうか?

並進運動と回転運動が理解できると、イメージしやすくなります。図はキックの流れと、骨盤と股関節を上から眺めているイメージです。

助走を並進運動(ニュートンの第2法則:F=ma:力=質量×加速度)とすると、キックのスイング自体は回転運動(オイラーの運動方程式:N=Iβ:回転力(トルク)=慣性モーメント(物体の回しにくさ)×角加速度)と言えます。

軸足は並進運動を制動して、蹴り足をさらに前に加速させる役割があります。助走(並進運動)のエネルギーをスイング(回転運動)へ変換します。

歩行も厳密に言えば並進運動や回転運動が混ざっているので助走が並進運動でキックが回転運動と言うのはとても大雑把な解釈ですが、蹴り足が軸足を追い越すには軸足の減速能力が重要であると言うことです。

プロ選手の軸足は「止まる」

プロ選手のロングキック、ゴールキックを分析するとスイングしている瞬間には脛骨(スネ)の前傾が止まることがわかりました。

特にスイングの「蹴り足の膝下を振っている間」は軸足の脛骨の傾きがピタッと止まっています。脛骨の傾きそのものは、同じ選手を分析しても前側に傾く「前傾」状態であったり後ろに傾く「後傾」状態であったりしますが、「スイング中はスネの傾き自体がピタッと止まる」ことは共通していました。

アマチュア選手はスイングの間も軸足の脛骨が前傾し続け、膝が曲がってしまいます。軸足が止まれば回転運動の軸になれるのでスイングは早くなりますが、アマチュア選手のように減速動作が十分に行えずに膝が曲がってしまう場合は回転運動を十分に行えていない可能性があります。

キック動作も以前説明したように移動動作なので、加速と減速、方向転換が上手にできることが上達への近道になるはずです。