キックの時に腕を挙げる理由 バランスはあまり重要ではないはず!?

キック

なぜ?は難しい!!

理論の後付けは簡単なので、私の一意見だと思ってください。

実際のプレーの中で選手の身体の使い方を説明することでわかることはあります。今回はまずフリーキックの中での腕の動きをみてみましょう。

結論として、私はそこまで「バランスを取るために腕を挙げることが必要」とは思っていません。ではなぜそう思うのか、実際の選手のプレーから考察してみようかと思います。

「挙げる」はそもそも正しいのか?

腕を挙げる、肩を挙げるというと、普通はこちらをイメージすると思います。確かに手の位置が挙がっています。ここが既に実際の動作と一致しないことがあります。

実際のフリーキック

(画像に引用元のリンクがあります)

色んなパターンがありますが、みんな腕が挙がってみえますね。腕を挙げるタイプのフリーキッカーで代表的なのは、特にベッカム選手です。ただやはりプレーの中ではあまり腕を挙げていないこともあります。パス、クロス、フリーキックなど様々な場面がありますが、その時によっても腕の使い方が少しづつ違ってきます。(それは今後個別に紹介していく予定です)

ちなみにこれは全て股関節の最大伸展(太ももが一番後ろに反っている時)の瞬間の状態を拾っています。ここにたどり着くまでの過程はどうなっているのでしょうか?

腕は「後ろに」引けている

蹴るまでの動きをみてみると、実は腕は後ろに引けています。おそらく蹴る直前に大きくステップを踏むことで、軸足や身体が前方に移動しているため、腕は相対的に後ろに引かれることになります。これは投球などでもみられるテイクバックの動きと同じもので、ここで「タメ」を作っているのです。筋肉が遠心性収縮(引っ張られて、縮むエネルギーを貯めている)状態を作り出しています。デコピンなんかで説明される原理です。ただ人差し指を動かしても動かす早さに限界がありますが、親指で抑えることですごい威力が出ますよね。これと同じ現象がキックする足や後ろに引かれた腕で起きているのではないかと考察できます。

ちなみにこのような反対側の腕を引く運動は、発達過程で徐々に観察されてくるようです。反対側の腕がどのように発達とともに変化して行くかを確認してみてください。だんだん全身を使った躍動感のある動きになって行くのもわかる気がします。

「3歳代の幼児では,ボールキック後,蹴り脚を素早く身体の下に引き戻すリトラクト現象がみられ,蹴り脚対側の腕は,横あるいは後方に引かれるウイング型を示す傾向が認められる.」(ヒトの基本動作の発達特性に基づく小学校体育科における教育内容(II)-操作系・回転系について-著:後藤幸宏 より、図と共に引用)と記されています。つまり、腕は「挙がっている」というよりも「後方、あるいは横方向へ引けるような運動であるようです。その後のパターンでも、腕はやはり後方に位置しています。

つまり、肩関節伸展と外転の組み合わせのような運動をしているようです。もちろん肩甲骨の内転や水平外転なども含まれているはずですが、まずは腕自体は「後外方へ挙がっている」のだと思われます。

「前に自ら挙げるタイプ」もいる

そうは言っても実際には、前に手を挙げる選手もいます。ただし、これは予備動作の範疇であると思われます。前に腕を上げている選手は、軸足を踏み込む前から腕を大きく上げています。そして一番股関節を伸展している時には既に腕の高さは下がり、後方へ向かいます。ベッカム選手なんかはまさにこんな感じです、写真の選手のように、このような腕の使い方をするタイプもいます。

腕は後ろに引かれているだけ

手を後ろの方向へ伸ばそうとしてみてください。多分こんな感じのパターンになるはずです。腕を後方に持って行くには、肩の伸展か屈曲、外転でつまり腕を持って行く方法がその人によって異なり、通過しやすい方が選ばれるのだと思います。一般的には青点線のパターンが多いと思います。僕が経験した範囲だと、かなり胸郭が柔軟なタイプは赤い点線でも実際のプレーのレベルまで腕を使うことができます。

反対側の腕の役割は何か?

腕の役割は、大胸筋や腹直筋、長内転筋などの筋の機能的な連結を作り出すことだと思われます。少し難しい言葉になってしまったので簡単に言いますと、直接足に関係なさそうないくつかの筋肉であっても、腕を挙げることでキックのために同時に働かせることができるという事です。一つの動作のために色々な関節をタイミングよく使うことができるということは、キネティックチェーンの上でも重要です。

腕の挙げ方の違いによる優劣は?

どっちが優れているかはわかりませんが、キックのスピードに関して言えば腕を前方から挙げるタイプが有利なのかなと思います。実際腕を前方から挙げるタイプの方が腕の位置は高く挙がっていることが多いので、「腕が挙がっていることによる利点」があります。

  1. 挙上により伸長された筋肉をより有効に使える(大胸筋下部繊維や腹筋群)
  2. 筋膜的な連結(小胸筋など烏口突起に関する筋肉も有効かも)
  3. 腕を下ろす力をそのまま使える

逆に腕を挙げる不利益は、モーションが大きく相手に間合いを詰められやすいことだと思います。そのためプレスキックでは腕を挙げるタイプの使い方をしていても、敵のプレスがある時はこのような腕の使い方をしない、使い分けができる選手が多いです。

よく聞かれるバイオメカニクス的要素

よくフィギュアスケートのスピンなんかで腕を伸ばしたり曲げたりしてると、回転数が変わったりすることを説明していますね。腕を広げることで実際上半身は安定します。そのため、体幹をよく捻ることができるようになります。慣性モーメントとか呼ばれているものですね。サッカーみたいに片手を上げている場合はどうなるでしょうか?

片手を上げることで、回旋の中心や重心は身体の中心にはなくなるのではないかと思われます。片手を挙げるだけでもこのような回旋に関わるバイオメカニクスは変化するはずです。

慣性モーメントに関して、面白い記事がこちらにあります。

https://www.sakaiku.jp/column/technique/2012/002549.html

かなりわかりやすい内容かなと思います、さすが監修されている方がいて実際の選手がいると面白いですね。結局、腕は挙がっていなくても転んだりしません。ですが、文節的な回旋が生じるのは腕が広がっている時ということです。この点からも腕が挙がることはバランスではなく、より身体の使い方の効率を挙げるためであることがわかります。

これは実際フィギュアをやってらっしゃる方の動画なのですが、右腕と左腕の使い方の違いを考えてらっしゃるようです。こういった実践レベルで行われている内容も面白いですよね。

バランスに関係しない?

キックは確かに片足で立つ動作なのですが、助走で既に腕を挙げている選手もいる以上、腕を挙げないとバランスが取れないかと言われると疑問が残ります。

ただ、このような全身を使うキック動作ができるようになる年代と、片足立ちなどのバランス能力が成熟する時期が同じであることからバランス能力自体が重要であることは否定できないと思います。

まとめ

  1. 腕を挙げる運動は、実際は「後ろに引く動作」に近い。
  2. 肩を「屈曲」して予備動作で腕を挙げるタイプと、ただ後外方へ腕が引かれていくタイプがいる。
  3. 腕を挙げなくても転ばない。腕を挙げるのはよりパフォーマンスの高いキックを蹴るためである。
  4. 腕を挙げることで慣性モーメントを使い、より体幹を捻って蹴ることができる
  5. 腕や体幹の関節を使い、全身の力をキックに使うことができるようになる

これがキックと反対側の腕が挙がる理由であると思います。特に3番が本質ではないでしょうか?ただし発達の問題もありますし、育成年代はあまりフィジカル的な要素に捉われなくてもいいかと思います。中学、高校生以上になりフィジカルの要素が必要になってきた時、以下のようなエクササイズはキックスピードなどに即効性があります。

色々ありますが、こんな感じのストレッチがオススメですよ。

いかがだったでしょうか?当ブログではできるだけご本人に役立つものを提供できるよう、わずかながら実践できる運動まで合わせて紹介できる、実践型のブログを目指していきます。ぜひご興味のある方へのご紹介などよろしくお願いいたします。