なぜインステップキックに足首の固定が重要なのか?

インサイドキック

意外とできていない

ロングキックの教科書でキック動作を分析した選手の中に、足首の固定ができていない選手がいました。

足首の固定ができていない選手は多いです。足首の固定なんて初歩的なことじゃないかと思うかもしれませんが、それはスポーツをされているカテゴリやレベルによると考えています。

僕の周りでは高校や大学からサッカーを始めた、社会人からサッカーを始めた、そんな数が一定数います。足首の固定は、この辺りの人たちがキックをグッと楽しめるようになるポイントではないかなと思います。それと、小学校低学年のキックが徐々にできてくる世代にも今回お話しするような知識があってもいいと思います。

まとめているうちに、足首の固定は全身の身体の使い方とも関係していることを言語化できました。こちらはPTには役に立つ知識かもしれません。

足首(距腿関節)の運動

 インステップキックは距腿関節を底屈させて行います。足首は解剖学的用語では「距腿関節」と言います。底屈とは、つま先を下に向ける運動のことを言います。基本軸は腓骨という骨で、移動軸は第5中足骨という骨です。腓骨と第5中足骨のなす角度が直角になっている時を「中間位」と言います。(図中央)

腓骨と第5中足骨のなす角度が、中間位より大きい場合を「底屈」(図左)、小さい場合を「背屈」(図右)と言います。

 なぜインステップキックは「底屈位」で行うのでしょうか?

インステップは足の甲

「インステップ」は「足の甲」という意味です。足の甲にボールをインパクトさせるキックなので、そのような呼び名なのでしょう。足の甲は足根骨(楔状骨・舟状骨)と呼ばれる複数の骨の総称です。足根骨は骨の集合体です。骨と骨は靭帯で固く結合され、お互いを密着させて固く大きな塊になっています。

足根骨の構造はインパクトに適している

この足根骨の構造は、ボールと衝突した時にエネルギーを伝えるのに適しています。キックされたボールが飛ぶのは、すごい速さでボールが変形して元に戻る反発力が働いているためです。足根骨がボールと衝突すると、一瞬の間にボールは変形します(図左〜中央)。そして変形したボールが元に戻る力が、ボールのスピードや飛距離を生み出しているのです。

(このボールを変形させる力は、スイングスピードに依存します。早ければ早いほど、インパクトの一瞬で伝えられるエネルギーが大きくなるからです。)

足根骨の「変形しづらい」といった特性が、インパクトする部位として非常に重要と言えます。

(ボールが硬すぎて飛ばないのは、スイングスピードが足りずボールを変形させることができないため。ボールが柔らかすぎて飛ばないのは、ボールが元に戻る力が足りないため。)

足の甲にインパクトさせる重要性はわかりました。では、底屈をしなければならないのはなぜでしょうか?

底屈しないと足の甲に当たらない!!

底屈位になると、足首の前方は「開き」ます(図左)。足の前が開くため、足の甲は前に出てきます。このため、ボールと足の甲はインパクトしやすくなります。これが底屈運動がインステップキックに必要な理由です。背屈運動を行なってしまうと(図右)、足の甲は脛骨(スネ)と中足骨の距離が近くなり、足の前の方が「閉じて」しまいます。こうなると足の甲にインパクトしたくても、ボールがスネと中足骨に阻まれてインパクトできません。

強いキック、早いキックを蹴るために「足の甲に当てる」ことと、「足を底屈にする」ことが大切であることはお分かり頂けたでしょうか?では、もう少し足の甲について考えていきましょう。

インサイドキックとインステップキックも実は同じ

インサイドキックはパス、インステップキックはシュート。役割で説明するととてもわかりやすいと思います。インサイドキックは「踵を押し出す」、「つま先を外に向ける」などと教わると思います。足の内側でインパクトさせると、パスに必要な「正確性」「再現性」を高めることができるからです。では、インサイドキックは足のどこでインパクトさせるのでしょうか?

インサイドキックもインステップキックも、同じ骨(足根骨)でインパクトしています。足根骨は足の甲の骨でもあり、足の内側のアーチ(土踏まず)を構成する骨の一部でもあります。足根骨は、足の甲(背側)からも、内側からも触ることができる骨なのです。

同じ足根骨でインパクトしているにも関わらず、なぜインサイドキックは「正確性」「再現性」に優れていて、パスとして使われているのでしょうか?それにはまず足首の構造を知る必要があります。

足が「ハマる」

距腿関節は、内くるぶしを含む「脛骨」と外くるぶしを含む「腓骨」で構成されています。この二つの骨で構成される部分が距腿関節の「天井」です。この部分に「距骨」が収まっており、それを「距腿関節」と言います。(図)

インサイドキックは、足を「背屈位」にして行います。インステップキックとは反対方向の運動です。この背屈位は「closed packed position」と呼ばれており、関節がガッチリはまって安定するポジションであると言われています。距骨の前方は後方と比較して大きくなっていて、背屈していくと距骨の前方が関節の中に入っていき、ギッチリして安定します。

インサイドキックは足首の固定を骨で行えるため、「正確性」「再現性」に優れていると考えられます。

筋肉による固定が必要ないので、ボールにインパクトしても負けることはありません。

インステップキックは「緩みの肢位」

インステップキックは距腿関節底屈位で行います。底屈位は距骨の後側の幅が狭い部分が距腿関節の「天井」に収まるため、関節は緩んだ不安定なポジションになっています。(図左・中央)そのため、インステップキックは関節の緩みを筋肉で固定しなければボールに強くインパクトすることができません

足首の固定ができないとキックは良くならない

インステップキックは足首を筋肉で固定しなければ、強くインパクトすることができません。足首の固定ができないとなぜボールが飛ばなくなってしまうのかを、先程の「ボールが飛ぶ原理」の画像を元に説明しようと思います。

キックの飛距離を伸ばしたり、スピードを上げたりするにはボールをしっかりと変形させて、元に戻ろうとする力を利用する必要があります。そのためには…

①足根骨でボールの中心を捉える。
②足首(距腿関節)を安定させる。
③スイングスピードを早くする。

体幹が〜とか、軸足が〜とか、股関節が〜とかは、概ね「③スイングスピードを早くする」ために必要なことだと考えています。そして、「②足首を安定させること」は、エネルギーをボールへ伝えることにおいて重要であると考えています。

足首が固定できないと、ボールへエネルギーが伝わらず強いキックができないのです

足首を固定できていないとボールにエネルギーが伝わらない

足首の固定が出来ている場合、図の上のようにインパクトとすると効率良くエネルギーが伝わりボールが変形します。もちろん、どのように当てるかによってボールの質(軌道、スピンなど)は変化しますが、ボールにエネルギーを伝えると言う点では理想的な状態です。

足首の固定が出来ていない場合、ボールはあまり変形せずに足首がより底屈方向へ動いてしまいます。これはボールへエネルギーを伝える上でも非効率ですし、三角骨障害の原因になったり内反捻挫後のキックの痛みの原因になったりすると考えています。(このあたりは選手ではなく理学療法士だけがわかってれば良い知識ですね)

重要なのは背屈筋群

インステップキックを蹴るには、足を底屈位にする必要があります。底屈するには、下腿三頭筋や後脛骨筋などふくらはぎの筋群を使う必要があります。これらの筋群は距腿関節を底屈させる筋肉なので、「底屈筋群」と呼んでも良いと思います。

では、インステップキックを蹴る時に足を固定するのはこの「底屈筋群」なのでしょうか?

私も以前は底屈筋群で固定すれば良いと思っていました。ですが、ボールにインパクトする瞬間を考えてみて下さい。足はボールにインパクトすると、その衝撃で強く底屈方向へ動かされます。つまり、底屈方向へ動かす筋群ではなく「底屈方向へ運動させないような筋肉」が足首を固定してくれなければならないのです。

このように、生じてしまう運動にブレーキをかけるように働く筋肉を「拮抗筋」と呼びます。底屈位で行うインステップキックに大切なのは、むしろ背屈させる筋群、「背屈筋群」なのです。

おわりに

足首の固定の重要性を説明しました。今回は特に解剖学的な説明をしておきました。
少し書き疲れたので、またどんな風に足首の固定を実践していくかをアップしていく予定です。